楽天、営業黒字達成も株価は急落:市場が注視する「最終赤字」と5兆円負債の重荷
ニュース要約: 楽天グループは2025年第3四半期にNon-GAAP営業利益583億円の黒字化を達成し、モバイル事業の改善が鮮明になった。しかし、市場は依然として続く純損益の赤字(1,512億円)と5兆円超の有利子負債を懸念し、発表翌日に株価は約9%急落。投資家は表面的な営業黒字ではなく、最終的な利益体質への転換を強く求めている。
楽天、まさかの株価急落:営業黒字転換の裏で市場が抱く「最終赤字」への懸念
2025年11月14日
楽天グループが11月13日に発表した2025年第3四半期(7月~9月)決算は、長らく待ち望まれた**Non-GAAP営業利益の黒字転換(583億円)**を達成し、モバイル事業の収益改善が鮮明になった。しかし、この好材料にもかかわらず、翌14日の東京株式市場において、楽天グループの株価は前日終値から一時約9%減となる大幅な急落を記録した。
収益改善という「光」と、株価急落という「影」。市場が楽天グループに対して抱く複雑な視線は、依然として続く最終損益の赤字と、5兆円を超える有利子負債という構造的な課題に起因している。本稿では、最新決算の分析と、市場が真に注目するモバイル事業の最終収益化への道のりに焦点を当てる。
第一部:営業黒字化の達成と、市場が冷ややかな理由
楽天グループの第3四半期決算は、売上収益が前年同期比10.5%増の1兆7,876億円と堅調に推移し、特にフィンテック事業の安定的な成長がグループ全体を牽引した。そして最大の焦点だったモバイルセグメントも大幅な収益改善を見せ、四半期EBITDA(税金・金利・減価償却前利益)は過去最高を記録した。
しかし、株価は市場の期待とは裏腹に大きく下落した。その背景には、投資家が最も重視する「最終的な利益」の改善が遅れている点にある。
2025年12月期第3四半期累計の純損益は1,512億円の赤字であり、これは前年同期比で赤字幅が拡大している。モバイル事業が基地局整備などで投じてきた巨額な設備投資に伴う減価償却費が依然として重くのしかかり、営業利益が黒字に転じても、最終利益の段階で赤字が解消されない構造が続いているためだ。
市場は、表面的な営業利益の改善よりも、キャッシュフローに直結する最終損益の黒字化、そして財務リスクの低減を強く求めている。アナリストの平均目標株価も1,060円前後と、現状の株価(951.9円)からの上乗せ余地は限定的であり、短期的な割安感は乏しいとの評価が優勢だ。
第二部:モバイル事業、損益分岐点達成のリアリティ
楽天グループの成長戦略の根幹は、依然としてモバイル事業の収益化にある。今回の決算で、モバイル事業の黒字化への道のりが具体的な数字となって示されたことは、中長期的には明るい材料だ。
楽天モバイルは、2024年末時点で目標としていた800万~1000万回線の契約数を達成し、EBITDAの単月黒字化も果たした。さらに2025年第2四半期には、楽天モバイル単体でNon-GAAP営業利益が201億円の黒字化を達成している。
現在の焦点は、この収益改善を安定させ、グループ全体の連結黒字へと繋げることだ。情報によると、2026年には楽天モバイル単体の連結営業利益黒字化が現実味を帯びてきている。鍵となるのは、契約数の安定的な増加に加え、ARPU(1契約あたり収益)の上昇だ。2025年中にARPUが想定される損益分岐点目安(2,500円~3,000円)に達する見込みであり、これが実現すれば、収益構造は抜本的に改善に向かう。
第三部:5兆円負債と市場の「強気」と「弱気」
楽天グループが抱える約5.3兆円の有利子負債は、長年の懸念材料だが、決算情報によれば現金及び現金同等物がこの負債総額を上回っており、短期的な資金繰りリスクは低いと見られている。しかし、投資家は長期的な財務健全性を注視している。
競合他社(ヤフー、メルカリ、ソフトバンクグループ)と比較しても、楽天グループはPBR(株価純資産倍率)基準では割高感があり、ROE(自己資本利益率)は赤字のため、利益面での遅れが目立つ。
市場の評価は割れている。「強く買いたい」とする投資家が53%に上る一方で、「強く売りたい」が27%超と高い水準にある。これは、モバイル事業の成功によるV字回復を期待する長期投資家と、最終赤字と財務リスクを警戒する短期投資家の間で、見解が大きく分かれていることを示している。
展望:最終利益の黒字化が株価を押し上げる鍵
2025年第3四半期決算は、楽天グループの経営改善の努力が実を結び始めたことを明確に示した。しかし、市場は既に織り込み済みの営業黒字ではなく、最終的な「利益体質への転換」を求めている。
今後、楽天グループが株価を再び押し上げるためには、フィンテック事業のさらなる成長とともに、モバイル事業で安定的な連結営業利益を創出し、純損益の赤字を解消する具体的な道筋を示すことが不可欠となる。2026年に向けたモバイル事業の収益安定化こそが、楽天グループの真価が問われるターニングポイントとなるだろう。