【尾上右近】伝統と革新の二刀流。歌舞伎座「連獅子」への挑戦と、映像界を席巻するカメレオン俳優の素顔
ニュース要約: 歌舞伎俳優と清元太夫の「二刀流」で知られる尾上右近が、4月の歌舞伎座で人気演目『連獅子』に挑みます。大河ドラマや映画で俳優としても脚光を浴びる一方、年間360食のカレー愛でも親しまれる彼。伝統の継承と現代的な発信力を併せ持つ、令和のスターの現在地と「表現者」としての圧倒的な熱量を深掘りします。
【文化・芸能】 伝統と革新の体現者、尾上右近。歌舞伎座「連獅子」への挑戦と、広がり続ける「表現者の地平」
2026年3月17日。京都・南座の春を彩る「花形歌舞伎 特別公演」が佳境を迎えている。その中心に立つのが、今や歌舞伎界のみならず、日本のエンターテインメント界を牽引するフロントランナーの一人、尾上右近だ。
2代目を襲名してから20年余り。清元節宗家の次男として生まれ、歌舞伎俳優と清元太夫(清元栄寿太夫)の「二刀流」を貫く異色の才子は、俳優としての円熟味を増すと同時に、その人気を全世代的なものへと押し広げている。
南座から歌舞伎座へ――「連獅子」に懸ける想い
現在、南座で25日まで開催中の「花形歌舞伎」に出演中の右近だが、ファンの視線はすでに、来月4月に控える大きな節目へと向けられている。歌舞伎座「四月大歌舞伎」の夜の部で上演される、屈指の人気演目『連獅子』だ。
今回、右近は親獅子を勤め、仔獅子には尾上眞秀を迎える。両者は2024年、右近の自主公演「研の會」でも同配役で共演し、伝説的な熱演を見せた間柄だ。満を持しての歌舞伎座での披露に、右近は「観た後に熱くなる、面白さと迫力がある舞台」と並々ならぬ意欲を見せている。伝統の重みを背負いつつ、観客の魂を揺さぶる「動」の表現――。チケットは3月14日から発売が開始されており、争奪戦は必至だ。
映像メディアで見せる「カメレオン俳優」の横顔
尾上右近の名を広く知らしめているのは、舞台上での活躍に留まらない。近年、彼は「歌舞伎俳優」という枠組みを軽やかに飛び越え、映像メディアで圧倒的な存在感を放っている。
2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』での孝明天皇役による鮮烈な大河デビューに始まり、映画『燃えよ剣』での松平容保役では第45回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。さらに、2026年放送予定の大河ドラマ『豊臣兄弟!』では足利義昭役としての出演も決定している。民放ドラマでも、航空整備士役を演じた『NICE FLIGHT!』で見せた等身大の演技は、それまで伝統芸能に馴染みのなかった若年層の心をも掴んだ。
バラエティ番組で見せる、機転の利いたトークと親しみやすいキャラクターも人気の要因だ。中高年層には大河ドラマの重厚な演技、若年層にはトレンディなドラマや映画、そして全世代に向けてのバラエティ露出。この多角的な露出戦略こそが、令和のスター・尾上右近の地位を不動のものにしたといえる。
「研の會」の終焉と、血統を超えた「個」の輝き
右近を語る上で欠かせないのが、2015年から続けてきた自主公演「研の會」だ。古典の掘り起こしや、小説を原作とした新作への挑戦など、自らプロデュースするこの場を通じて、彼は「一人の表現者」としての骨格を作り上げてきた。しかし、昨年行われた第九回公演において、次回の第十回をもって同会に終止符を打つことが発表された。これは彼にとっての「卒業」であり、さらなる高みへ向かうための決意の現れだろう。
彼の背景には、清元節の家元である父・七代目清元延寿太夫、そして母方の祖父である昭和の大スター・鶴田浩二、さらには「歌舞伎の神様」六代目尾上菊五郎という、燦然たる血脈が流れている。しかし、今の右近から受ける印象は、単なる「サラブレッド」の枠に収まらない。自ら道を切り拓く「一表現者」としての圧倒的な熱量だ。
素顔は「カレー愛好家」――親しみやすさが生むファンダム
一方で、彼のブランディングにおいて重要な役割を果たしているのが、年間360食を平らげるという驚異的な「カレー愛」だ。著書『尾上右近 華麗なる花道』の出版や、カレーブランドのアンバサダー就任など、趣味の域を超えた活動は、ファンとの距離を劇的に縮めた。
「ルーとご飯の比率は6対4」という独特のこだわりや、楽屋裏でのエピソードは、孤高の歌舞伎役者というイメージを良い意味で覆し、現代的な推し活の対象としての魅力を付与している。
伝統芸能の核心を守りながら、映像の世界で新しい息吹を吹き込み、趣味を通じて大衆と繋がる。尾上右近という現象は、歌舞伎という400年の歴史を持つ芸能が、現代社会においてどう生きるべきか、その一つの解を示しているのかもしれない。4月の歌舞伎座、獅子の精が狂い舞う舞台で、彼はまた新しい「右近」を私たちに見せてくれるに違いない。
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