【試練】キングカズ所属アトレチコ鈴鹿、地域リーグ降格決定 延長戦で散る

試練の時：三浦知良所属のアトレチコ鈴鹿、地域リーグ降格が決定

58歳キングカズ、延長戦で不発 プロ41年目へ「這い上がる」

【鈴鹿・市原発 2025年12月1日】

サッカー界の生ける伝説、FW三浦知良（58）が所属する日本フットボールリーグ（JFL）のアトレチコ鈴鹿は11月30日、三重交通Gスポーツの杜鈴鹿で行われたJFL・地域リーグ入れ替え戦で、地域チャンピオンズリーグ準優勝のVONDS市原（ボンズ市原）と激突し、延長戦の末0対1で敗北した。この結果、アトレチコ鈴鹿の地域リーグ降格が決定した。

58歳にして現役続行への強い意志を表明しているキングカズは、延長後半6分から途中出場し、チームの窮地を救うべく奮闘したが、ゴールは生まれず。プロ41年目を目指す三浦知良の道のりは、クラブの降格という大きな試練とともに、新たな局面に突入した。

■ 満員御礼のスタジアムで散った夢

この日のjfl 入れ替え戦は、キングカズ効果により、地域リーグとの境界線にある試合としては異例の満員となった。スタジアムには、三浦知良の雄姿を目に焼き付けようと集まった熱心なファンが詰めかけ、独特の緊張感と熱気に包まれた。

試合は、JFL残留を目指すアトレチコ鈴鹿と、3年連続で入れ替え戦に挑んだVONDS市原の意地がぶつかり合う展開となった。互いに決定機を作りながらも90分間はスコアレスで終了。勝負は延長戦にもつれ込んだ。

均衡が破られたのは、延長前半8分。VONDS市原は、FW加藤勇司ベサーナが左足で強烈なボレーシュートを叩き込み、待望の先制点を奪取。これが決勝点となった。

アトレチコ鈴鹿は、この失点直後、最後の切り札として三浦知良を投入。カズは前線でボールを呼び込み、持ち前の経験と技術で攻撃を活性化させようと試みたが、ボンズ市原の堅守を崩すには至らず、無念のタイムアップを迎えた。

今季、リーグ戦7試合に出場し無得点に終わっていた三浦知良は、この入れ替え戦でも得点を挙げられず、チームの降格を食い止めることはできなかった。

■ キングカズ、「諦めず這い上がる」決意

試合後、三浦知良は報道陣に対し、悔しさを滲ませながらも、現役続行への強い意志を改めて示した。「一年間通して力になれなかったことを非常に悔しく思うが、これも自分のサッカー人生の一部。この結果を真摯に受け止め、来季も諦めずに、はい上がるしかない」と語った。

三浦知良の契約は、所属元の横浜FCからの期限付き移籍であり、来季の去就は未定だ。クラブ側からのオファーがあれば検討する意向を示しているが、アトレチコ鈴鹿が地域リーグへ降格したことで、クラブの経営状況や編成方針に大きな影響が出ることは避けられない。

キングカズの存在は、集客面やメディア露出においてアトレチコ鈴鹿に多大な貢献をしてきたが、来季、地域リーグの舞台でプロ41年目を迎えるのか、あるいは新たな挑戦の場を求めるのか、その動向に注目が集まる。

■ 鈴鹿は経営の危機、市原は悲願の昇格

アトレチコ鈴鹿にとって、JFLからの降格は戦力面だけでなく、クラブ経営においても深刻な打撃となる。JFLと地域リーグでは、スポンサー収入やメディア露出、観客動員数に大きな隔たりがあり、収益の大幅な減少は避けられない。主力選手の流出も懸念され、来季のJFL復帰に向けた道のりは険しいものとなるだろう。経営基盤の早急な見直しと強化が急務となる。

一方で、勝利を掴み取ったVONDS市原（ボンズ市原）は、3年連続の挑戦でついにJFL昇格という悲願を達成した。市原市を本拠地とする同クラブは、地域密着型の運営を強みとしており、初のJFL参戦により、地域スポーツの活性化とブランド力の向上が期待される。

VONDS市原の昇格は、地域リーグのレベル向上を象徴するものであり、JFLの競争環境が一層厳しくなることを示唆している。

今回のjfl 入れ替え戦は、三浦知良という稀有な存在がフットボール界にもたらす影響力の大きさと、アマチュアに近いカテゴリーであっても、クラブ経営の持続可能性が常に問われているという厳しい現実を浮き彫りにした。58歳にしてなお、不屈の闘志を燃やすキングカズの選択が、今後の日本サッカー界にどのような影響を与えるのか、引き続き注目される。