衆院議員定数1割削減で自民・維新合意:政治改革か数合わせか、燻る火種
ニュース要約: 政治の信頼回復に向け、自民・維新両党は衆議院の議員定数1割削減(45議席)法案で合意し、年間約35億円の財政効果を目指す。しかし、野党はこれを「数合わせ」とし、歳費削減や選挙制度全体の抜本改革が先決だと強く反発。削減案の実現は、真の「身を切る改革」となるか、政治の姿勢を問う試金石となる。
「身を切る改革」の行方:衆院議員定数削減、自民・維新合意も燻る火種
【東京】 政治の信頼回復が喫緊の課題となる中、衆議院の議員定数削減を巡る議論が、年末の国会で最大の焦点となっている。与党側の自民党と、閣外協力関係にある日本維新の会は、衆議院の議員定数を「1割削減」、具体的には計45議席(小選挙区25、比例代表20)を削る法案で合意し、今国会での成立を目指している。しかし、野党側は「単なる数合わせであり、選挙制度全体の抜本改革や歳費削減が先決」と強く反発しており、法案の実現には依然として高い壁が立ちはだかっている。(2025年12月4日付)
早期成立目指す与党、野党は「改革の本質」を問う
自民・維新両党が合意した議員定数削減案は、「身を切る改革」を求める国民の期待に応えるための政策パッケージの中核に位置づけられている。特に、2025年10月の高市早苗政権発足時、日本維新の会が閣外協力の条件として強く推進した経緯があり、維新側は「政治の無駄を省き、国民負担軽減に繋げる第一歩」と位置づける。
この削減が実現すれば、国庫への財政効果は年間約35億円と試算されている。これは、議員給与や文書通信交通滞在費といった直接的な経費の削減分であり、国民の税金支出の一部軽減に繋がる。
しかし、野党側の視線は厳しい。立憲民主党は、この削減案に賛成する議員はほぼいないとの見方を示しており、国民民主党の玉木雄一郎代表も、小手先の定数削減ではなく、選挙制度全体の抜本的な見直しを優先すべきだと主張する。さらに、野党の一部からは、定数削減よりも議員の歳費(給与)削減こそが、真の「身を切る改革」であり、国民へのメッセージとなるとの意見が根強い。
財政効果の限界と民意反映のリスク
議員定数削減がもたらす効果については、その実効性や副作用について多角的な検証が必要だ。
まず、財政効果の面では、年間35億円の削減は無視できない数字であるものの、国会議員に関連する支出の全体像から見れば限定的だ。例えば、年間約315億円に上る政党助成金は削減対象外であり、国民の税金が投入される政治資金の構造的な問題は手つかずのままだ。経済学者の間では、「議員数が減ることで、議会の行政監視機能が弱まり、結果的に官僚や役人のムダ遣いが野放しになるリスクがある」との指摘も出ている。
次に、民意反映の観点だ。定数が削減されれば、一人の議員が代表する有権者数は増加する。これによって、議員はより広域的な視点を持つようになるという肯定的な見方がある一方で、懸念も大きい。
旭川市議会などの地方議会での議論を参照すると、定数削減は現職議員の優位性を高め、若年層や女性など、多様な層の政治進出を困難にする可能性がある。また、各界各層の意見を反映した議員構成が実現しにくくなり、「住民を代表する審議決定機能」が損なわれるリスクも指摘されている。単に「数を減らす」ことが、議会の質や多様性の向上に直結するわけではないというジレンマがここにある。
繰り返される議論と国際的な潮流
議員定数削減は、日本政治において長年にわたり繰り返されてきたテーマである。
戦後の定数増加を経て、1994年の小選挙区比例代表並立制導入を契機に本格的な削減議論が始まった。2000年に20人、2016~2017年に10人の削減が実現したが、その都度、与野党間の合意不足や、議員自身の利益が絡む「聖域」として、抜本的な改革は何度も挫折してきた歴史がある。
2025年の今回の削減案も、過去の経緯を繰り返すのではないかという懸念は拭えない。
国際的に見ると、主要国と比較して日本の国会議員総数(衆参合わせて713名)は極端に多いわけではないが、近年、イタリアでは2020年の憲法改正により議員定数が大幅に削減され、総定数が600名となっている。これは、政治への信頼回復と効率化を目指す国際的な潮流の一部を反映していると言える。
今回の自民・維新の合意は、国民の「身を切る改革」への強い要求に応えるための第一歩となるか、あるいは、本質的な政治改革から目を逸らすための「数合わせ」に終わるのか。国会での法案審議の行方は、政治の信頼回復に向けた日本の姿勢を占う試金石となるだろう。