バーガーキング日本事業、700億円でGSへ売却決定—39ヶ月連続増収の「好調のバトン」
ニュース要約: 米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)が、バーガーキングの日本事業を約700億円で買収する優先交渉権を獲得した。現在のファンドは、既存店売上が39ヶ月連続で前年超えという異例の好調な成長局面で「出口戦略」を実行。GSはこの強固な成長基盤を引き継ぎ、600店体制を目指す計画を加速させる見込みで、今後の外食業界の動向が注目される。
バーガーキング日本事業、700億円で売却へ—好調を支えたファンドの「出口戦略」とゴールドマンの野心
2025年11月17日、ファストフード業界に衝撃的なニュースが駆け巡った。米金融大手ゴールドマン・サックス(GS)が、ハンバーガーチェーン「バーガーキング」の日本事業を買収するため、優先交渉権を獲得したことが明らかになった。買収額は約700億円規模と見られており、正式決定は間近とされている。
日本市場において、バーガーキングはこれまで幾度となくオーナーが代わり、経営の安定化が課題とされてきた。しかし、今回の資本交代は過去のそれとは性質が大きく異なり、むしろ事業が好調な「成長局面」にある中での戦略的な動きとして注目されている。
異例の「好調な中での売却」
バーガーキングの日本事業を運営するのは、ビーケージャパンホールディングス(ビーケージャパンHD)だ。現在のオーナーは香港の投資ファンド「アフィニティ・エクイティ・パートナーズ」だが、同ファンドが事業を育て上げた手腕は目覚ましい。
2025年10月時点で国内店舗数は300店を突破。さらに特筆すべきは、既存店売上が39ヶ月連続で前年を上回るという、驚異的な成長基調にある点だ。これは、競争の激しい日本の外食市場において、バーガーキングの「ワッパー」を中心とした商品戦略と積極的な出店攻勢が功を奏した証拠である。
今回の売却は、こうした好業績を背景に、投資ファンドが「育てた事業を最も高値で売却する」という典型的な「出口戦略」として位置づけられる。事業が低迷しての身売りではなく、成長のピークにある段階での資本回収であり、ゴールドマン・サックス側も、この成長性を高く評価したと言えるだろう。
600店目標の行方とゴールドマンの経営戦略
ゴールドマン・サックスは、投資ファンドとして外食分野での知見と潤沢な資金力を持ち、ビーケージャパンHDのさらなる成長を促す狙いがある。
現行のバーガーキング日本事業は、2028年末までに600店舗体制を目指すという野心的な「600店計画」を掲げている。GSが買収後にこの計画を維持・加速させるのかが最大の焦点だ。
一般的に、ファンド主導の経営では、投資回収を重視するため、短期的な収益性や効率化が優先される傾向にある。これにより、今後は出店ペースが鈍化する可能性も指摘される一方で、収益性の高い都市部や優良立地への集中出店はさらに加速するだろう。
また、メニュー開発においても、高利益率の商品や、差別化を図れる限定メニューへの注力が強化される見込みだ。消費者の目線からすれば、価格競争に巻き込まれることなく、ブランド価値を維持し続けることができるのか、今後の新体制の手腕が問われることになる。
日本市場におけるバーガーキングの複雑な歴史
バーガーキングは、日本市場において安定した地位を築くまでに複雑な歴史を辿ってきた。1993年の西武グループによる初上陸、2001年の撤退、そして2007年のロッテグループ系による再上陸と、度重なるオーナー交代劇があった。
特に、頻繁に経営権が移ることは、長期的なブランド戦略の一貫性を保つ上で大きな課題となっていた。過去には、価格競争や店舗数不足により、マクドナルドなどの競合に水をあけられ、経営難に陥った時期もある。
しかし、2017年からの現ファンド運営体制下で、積極的に店舗を増やし、既存店をテコ入れすることで、ようやく日本市場での存在感を確固たるものにしつつある。
今回のゴールドマン・サックスへの売却は、その成長基盤が安定した状態で行われる「資本のバトンタッチ」である。GSという国際的な金融大手が、バーガーキングの日本における経営を安定させ、真の「第三極」として定着させられるのか。今後の動向は、日本のファストフード業界全体に大きな影響を与えるだろう。