DAZN、西甲リーグ長期契約で放映権市場を席巻!サウジ資本注入で加速する新ビジネスモデル
ニュース要約: スポーツストリーミング大手DAZNは、西甲リーグの長期放映権を獲得し、グローバル市場で存在感を高めている。サウジアラビア政府系ファンドから約1500億円の資金注入を受け、財務基盤を強化。高騰するコンテンツ費用に対応するため、純粋なサブスクリプションモデルから、広告付き無料版やスポーツ賭博連携など、収益多角化へとビジネスモデルの変革を急いでいる。
DAZN、世界スポーツ放映権市場を席巻:西甲リーグ長期契約とサウジ資本注入で変貌するビジネスモデル
(ロンドン発、2025年11月29日 共同通信)
デジタルスポーツストリーミングの巨人DAZN(ダゾーン)が、2026年シーズン以降のグローバルな放映権市場において、その存在感をかつてないほど高めている。特に欧州の主要サッカーリーグにおける強固な地位の維持・拡大に加え、サウジアラビアの戦略的資本注入を受け、従来のサブスクリプション(定額制)に依存しない新たなビジネスモデルへの変革を急いでいる。高騰するコンテンツ費用と競争激化の波の中で、DAZNの戦略は、世界のスポーツ視聴体験と収益構造をどのように塗り替えるのか、詳細を追う。
欧州サッカー放映権の再編:西甲と欧州CLの動向
DAZNは、欧州トップリーグの放映権争奪戦において、引き続き主導的な地位を保持している。最も注目すべきは、スペインの西甲リーグ(ラ・リーガ)である。
最新の情報によれば、DAZNはMovistar Plus+と共同で、2027/28シーズンから2031/32シーズンまでの国内放映権を獲得した。これにより、両プラットフォームは毎週5試合ずつを配信する体制となり、従来のMovistarによる独占的な全試合配信体制が崩れた。この新たな競争的な分配構造は、市場の多様化を促すとともに、西甲リーグの放映権総収入を史上最高の年間10億ユーロ超に押し上げ、優良コンテンツに対する市場の強い需要を示している。
また、DAZNは、サッカーファン垂涎の欧州CL(UEFAチャンピオンズリーグ)の2027年から2031年周期のグローバル放映権入札への積極的な参画を計画しており、世界的なトップイベントの確保に強い意欲を示している。現在、ドイツの徳甲リーグの放映権も、2025年シーズン末に再入札を迎える見込みであり、DAZNはここでも主要な競争者として名乗りを上げると見られている。
サウジ資本による財務強化と収益多角化の道
DAZNの戦略的な動きを支えているのが、強大な資本力である。2025年2月、サウジアラビアの政府系ファンド(PIF)傘下であるSURJ Sports Investmentから、10億ドル(約1500億円超)の巨額な資金注入を受け、10%の株式を取得された。このサウジ資本の参入は、DAZNの財務基盤を劇的に強化し、コンテンツ獲得競争における優位性を高めた。
しかし、DAZNが直面する最大の課題は、依然としてコンテンツ費用のコントロールである。年間30億ドルを超える放映権支出は、純粋なサブスクリプションモデルだけで賄いきれない水準に達しており、収益化へのプレッシャーは高い。このため、同社はビジネスモデルの急速な転換を図っている。
具体的には、以下の多角化戦略を推進している。
- 分級サブスクリプションモデル: 広告付きの無料版(AVOD)とプレミアムな無広告版の導入を検討し、ユーザーの価格感度に応じた柔軟な対応を目指す。
- 新興分野への統合: スポーツ賭博(ブックメーカー)との連携や、NFT・デジタルコレクティブル販売によるファンエンゲージメントの収益化。
- 広告技術の革新: AIを活用したターゲティング広告の導入による収益最大化。
視聴率が示す市場の熱狂:ボクシングとサッカーの成功
DAZNが配信するコンテンツの質は、具体的な視聴率実績にも表れている。2025年、DAZNは重量級ボクシングと欧州サッカーで目覚ましい成果を上げた。
特に、10月の欧州CLグループステージの「マンチェスター・シティ vs. バイエルン・ミュンヘン」戦では、グローバルで同時オンライン視聴者数が400万人を超え、年間最高のサッカー視聴率を記録した。また、ボクシング界では、井上尚弥選手の試合がPPV(ペイ・パー・ビュー)販売で30万件を突破するなど、「井上尚弥DAZN」効果が顕著に現れている。
これらの実績は、DAZNが独占的なトップコンテンツを確保することで、ユーザーのエンゲージメントとサブスクリプションの純増(2025年Q3で120万人超)を達成していることを示している。
今後の展望:価格戦略と日本市場への影響
DAZNは今後、ユーザー体験の向上と収益性の両立を目指し、「ユーザー分層」「コンテンツ差別化」「ローカライズ」を軸とした戦略を強化するとみられる。新規加入者を引きつけるため、特定のリーグや競技に特化した「イベント専用パッケージ」や、他エンターテイメントプラットフォームとの「バンドル(複合契約)パッケージ」の提供が加速する可能性がある。
日本市場においては、Jリーグとの長期契約を背景に、欧州サッカーやボクシングなどの国際的な人気コンテンツへのアクセスを提供し続けている。しかし、グローバルなコンテンツ費用の高騰とサウジ資本による成長圧力は、今後、日本国内でも「プレミアムサブスクリプション」や、サービスの価格戦略や提供形態に影響を及ぼす可能性が高い。
DAZNのビジネスモデルの変革は、単なる放映権ホルダーに留まらず、デジタルエンターテイメント市場全体における新たな収益源と視聴体験の創出を牽引する存在として、引き続き注目を集めるだろう。