Cloudflare大規模障害の波紋:外部依存とログ消失が警告するインフラの限界
ニュース要約: 2025年、Cloudflareで連鎖的なサービス障害やログデータの消失が多発。外部クラウドへの依存が引き起こす構造的なリスクを露呈し、インターネットインフラの信頼性と事業継続のあり方に大きな警鐘を鳴らした。
2025年、Cloudflareを襲った「連鎖する障害」の波紋:外部クラウド依存とログ消失が暴いたインフラの脆弱性
はじめに:頻発する障害が揺るがすインターネットの根幹
2025年は、インターネットの基盤を支えるCDN(コンテンツ配信ネットワーク)最大手、米Cloudflare(クラウドフレア)にとって、信頼性の試金石となる年となった。年間を通じて複数回発生した大規模なシステム障害のうち、特に6月の「連鎖的障害」と11月の「ログデータ消失」は、全世界のウェブサービスに甚大な影響を及ぼし、デジタルインフラが抱える構造的な脆弱性を浮き彫りにした。
現在、日本国内の多くの企業やサービスも、セキュリティ、パフォーマンス、安定性のためにCloudflareに依存している。今回の度重なるインシデントは、単なる技術的なエラー報告に留まらず、日本企業に対しても、インフラの冗長性や外部依存リスクに対する再評価を強く促している。
6月の大規模障害:サードパーティ依存という落とし穴
2025年6月12日(日本時間13日未明)に発生した約2時間半に及ぶサービス停止は、今年のCloudflare障害の中で最も衝撃的だった。Twitch、Gmail、Discordなど、グローバルな人気サービスが軒並みアクセス不能に陥り、その影響は世界的な広がりを見せた。
この障害の根本原因は、Cloudflare自体の直接的なミスではなく、「サードパーティ依存」にあった。公式の報告によれば、障害はCloudflareのコアサービスであるWorkers KVが利用する基盤ストレージインフラストラクチャが、外部のクラウドプロバイダー(Google Cloud)の障害に巻き込まれたことが直接の原因とされている。
Workers KVは、設定、認証、アセット配信など、極めてクリティカルなデータを管理しており、WARP、Access、Gateway、Cloudflareダッシュボードといった多数のCloudflare製品がこれに依存していた。一つの基盤ストレージの障害が、このWorkers KVを経由して広範なサービスに「連鎖的」に影響を及ぼし、大規模な単一障害点として機能してしまったのである。
これは、クラウドネイティブ時代において、インフラの冗長性を高めても、その基盤を構成するサードパーティのクラウドプロバイダーの可用性リスクを内包せざるを得ないという、複雑な相互依存関係のリスクを顕在化させた事例として、重く受け止められている。
11月のログ消失:信頼性を揺るがす不可逆的なデータ損失
さらに直近では、2025年11月14日に発生したログサービスの大規模な機能不全が、システムの信頼性そのものに疑問を投げかけている。このインシデントでは、約3.5時間にわたりログサービスの機能が停止し、顧客のログデータの約55%が不可逆的に消失した。
原因は、ソフトウェアアップデートに伴う設定ミスと、バッファ管理システム(Buftee)のリソース不足による過負荷であったと説明されている。ログデータは、セキュリティ監査、コンプライアンス順守、そして障害発生時の迅速なトラブルシューティングにとって生命線であり、その半数以上が失われたという事態は、サービス停止以上に、データの永続性という基本的な信頼性を損なうものだ。
2025年には、他にも人為的ミスによるR2ストレージ障害(3月)や、設定ミスによるパブリックDNSサービス「1.1.1.1」の停止(7月)など、多様な要因によるインシデントが報告されており、Cloudflareの内部管理プロセスやセーフガード(保護機構)の弱点が相次いで露呈している。
今後の課題:冗長化を超えた「依存分散」戦略へ
Cloudflareは、こうした一連の障害を受けて、単一障害点を排除するためのシステムの再設計、特にサードパーティへの依存関係を最小化し、インフラの冗長性を強化することを最優先の課題としている。
しかし、今回の事例が示す教訓は、クラウドサービスを深く利用するすべての企業にとって重要だ。自社が利用するサービスのインフラが、さらにその先のサードパーティ(Google CloudやAWSなど)に依存している場合、その見えない部分のリスクをどのように評価し、事業継続計画(BCP)に組み込むかが問われている。
日本のデジタルインフラの安定性を保つためにも、「プロバイダー任せ」にせず、グローバルなインフラ層で発生する連鎖的障害を想定した、より多角的なリスク管理体制の構築が急務となっている。(984文字)