アクアライン多重衝突事故：長時間通行止めが問う巨大インフラの「構造的脆弱性」

東京湾アクアライン多重衝突、浮き彫りになった巨大インフラの構造的脆弱性：長時間に及ぶ「アクアライン事故通行止め」が問いかける安全対策

2025年11月27日

東京湾アクアライン（東京湾横断道路）上り線トンネル内で26日未明に発生した6台が絡む多重衝突事故は、その後の長時間にわたるアクアライン事故通行止めと周辺道路の大規模な渋滞を引き起こし、首都圏の物流と通勤に甚大な影響を与えた。この事故では、20代男性1名が意識不明の重体となるなど計4名が負傷。警察は現在、大型バイクの追突を発端とする事故原因の徹底的な究明を急いでいる。

事故は、26日午前2時44分頃、川崎市側（3.9キロポスト付近）の上り線トンネル内で発生した。大型バイクが大型トラックに追突した後、後続の乗用車などが連鎖的に衝突したとみられ、現場は阿鼻叫喚の様相を呈した。

長時間通行止めが招いた経済活動への打撃

事故直後の午前3時から、袖ケ浦ICから川崎浮島JCT間の上り線が全面通行止めとなり、現場検証と清掃作業が難航したため、解除の目処が立たない状況が長時間続いた。

首都圏と千葉を結ぶ大動脈であるアクアライン事故通行止めの影響は甚大だった。NEXCO東日本は京葉道路や湾岸道路経由の迂回を推奨したが、これらのルートも慢性的な混雑の上に通常時の5倍以上（約85分）の時間を要する大渋滞が発生。特に朝の通勤時間帯には、千葉方面からの通勤者や生鮮食品などを運ぶ物流車両が立ち往生し、経済活動への打撃は計り知れない。また、アクアラインを経由する高速バスも全て迂回運行となり、大幅な遅延に見舞われた。

神奈川県警高速隊による初期調査では、事故現場が長距離にわたるトンネル内であり、夜間の視認性の悪さや、速度超過、車間距離の不保持が連鎖的な衝突を招いた可能性が高いと見られている。トンネル内での急ブレーキが、後続車群の回避行動を間に合わせなかったことが、重傷者を出した主要因の一つとして捜査が進められている。

構造上の課題：なぜ事故は繰り返されるのか

今回の重大事故は、東京湾アクアラインという巨大インフラが抱える構造的な脆弱性を改めて浮き彫りにした。

アクアラインの海底トンネル区間は、長距離にわたる直線区間が多く、高速走行が続くことでドライバーの注意力が散漫になりやすい「ロード・ヒープノシス（道路催眠現象）」のリスクが高い。また、トンネル内は外部からの光が入らず、視認性が低下するため、特に夜間・早朝の時間帯では、わずかな油断が重大事故に直結する。

さらに、アクアラインは過去にも構造的な問題や設備の不具合による交通障害が報告されている。記憶に新しいのは、2025年9月に発生した非常用設備（水噴霧装置）の誤作動による長時間通行止めだ。この時は事故こそなかったものの、清掃に時間を要し、インフラ維持管理における課題が指摘されていた。

構造上の特性に加え、非常用設備の信頼性や、緊急時の迅速な対応体制についても、今回の長期化するアクアライン事故通行止めを通して、社会的な検証が求められている。

再発防止に向けた運営会社の取り組みと展望

NEXCO東日本は、事故の再発防止に向けた対策を強化している。具体的な取り組みとしては、トンネル内の監視カメラやセンサーの増設による警備体制の強化、パトロール頻度の向上を図ることで、異常発生時の早期検知と対応の迅速化を進めている。

また、ドライバーへの注意喚起も強化されており、トンネル内での速度遵守や車間距離の確保を促す看板や音声案内を充実させている。しかし、利用者側にも夜間・早朝の運転における一層の緊張感と、十分な休憩を取る意識が求められる。

中長期的には、開通から時間を経たアクアラインのインフラ老朽化対策が喫緊の課題となる。設備の更新や耐震補強に加え、今後は監視システムにAIやIoT技術を導入し、異常な運転挙動や設備異常を自動で検知する仕組みの構築が急務だ。これにより、人的ミスや設備の誤作動による事故リスクを最小限に抑えることが期待される。

今回のアクアライン事故通行止めは、単なる交通規制の問題に留まらず、巨大インフラの安全管理体制、そして高速道路利用者の安全意識のあり方について、重い問いを投げかけている。道路管理者と利用者が一体となり、二度とこのような悲劇を繰り返さないための対策を講じる必要がある。当局は、事故原因の詳細を速やかに公表し、今後の具体的な再発防止策を明確に示す責務がある。（了）