高市政権の「強硬外交」が招く波紋:靖国・台湾と「敵国条項」を巡る日中緊張の行方
ニュース要約: 高市首相の就任後、日中関係はかつてない緊張に直面。首相の台湾有事に関する発言や靖国問題への姿勢に対し、中国は国連憲章の「敵国条項」を持ち出し圧力を強めている。この強硬外交は国内の安保論争を激化させ、経済交流にも影を落とすが、両国は対話の窓を残す姿勢を示している。
【深度解説】高市政権下の「強硬外交」が招く波紋:靖国、台湾、そして「敵国条項」を巡る日中関係の緊張
2025年11月23日
高市早苗氏が日本初の女性首相に就任して以来、日中関係はかつてない緊張状態に直面している。特に、首相の「台湾有事は日本有事」との持論の再燃や、戦没者慰霊のあり方を巡る発言は、中国側の強い反発を招き、国内の安全保障論争を深く突き動かしている。この外交的摩擦は、国際的な視点から日本の歴史認識や安全保障政策を再考させる契機となっている。
高市首相の対中姿勢と外交的配慮
高市首相は、自民党総裁選以前から一貫して対中強硬姿勢を崩していない。就任後の国会答弁においても、台湾海峡の安定について「日本は安全保障上、無関係ではいられない」と明言し、中国側の「内政干渉」とする抗議を招いた。
中でも、最もデリケートな問題として浮上しているのが靖国神社参拝の是非である。高市首相は過去に「在任中も参拝する」と表明していたが、2025年10月の秋季例大祭への参拝は見送られた。これは外交問題化を避けるための「外交的配慮」と報じられているものの、中国外交部は首相の過去の言動に対し、引き続き「中国人民の感情を傷つける」と強い抗議を続けている。
この緊張の余波は経済にも及んでいる。報道によると、上海などでは日本料理店の中国人客の減少や、旅行客のキャンセルが相次いでおり、日中間の政治的対立が経済交流に影を落とし始めている。
しかし、外交ルートは完全に閉ざされたわけではない。10月に高市首相と習近平国家主席がAPEC会議期間中に初の場外会談を行い、「日中関係の安定化」を確認した事実は、両国が互いに慎重ながらも対話の窓を残そうとしている姿勢を示している。
「敵国条項」を引用する中国の意図
高市首相の強硬な発言に対し、中国側が政治的圧力として持ち出したのが国連憲章に残る「敵国条項」であった。第二次大戦の「敵国」に対する強制措置を認めるこの条項は、1995年の国連総会で「死文化」が確認され、現代においては法的効力を持たない。にもかかわらず、中国側がこれを引用し、「日本への軍事行動権がある」と主張したことは、国際法上の根拠を欠きながらも、日本への政治的圧力を極限まで高めようとする意図が読み取れる。
東アジアの国際政治を専門とする東京大学の高原明生教授は、この外交的緊張について、「高市首相の靖国神社参拝問題は、中国だけでなく韓国にも影響を与え、日中韓の三極関係をさらに複雑化させている」と指摘する。歴史認識問題と安全保障環境が密接に絡み合い、地域の不安定化要因となっている構図が浮き彫りとなっている。
野党とジャーナリズムの追及
高市政権の外交姿勢は、国内の政治論争も激化させている。立憲民主党の重鎮である岡田克也氏は、高市首相の台湾問題に関する発言が「日中関係の悪化を招くだけ」と厳しく批判。また、与党内で議論が深まる「敵国条項」の見直しについても、国際社会の理解を得る必要性を主張し、慎重な対応を求めている。
こうした政権の動きに対し、ジャーナリズムも鋭い視線を向けている。
TBS系の報道特集などでは、高市政権の対中戦略と国内の安全保障論争が継続的に取り上げられている。ジャーナリストの膳場貴子氏は、高市首相の強硬姿勢を「与党内の保守派の支持を得るための戦略」と分析しつつも、「台湾有事への関与は、日本にとってリスクが大きい」と警鐘を鳴らす。
また、ジャーナリストの望月衣塑子氏も、首相の発言が与党内の保守派とリベラル派の対立を深め、特に安全保障政策や「敵国条項」の見直しを巡る議論が党内で激化している現状を指摘している。彼女たちは、報道の多様性と社会的責任の観点から、外交的配慮の裏側にある政治的意図を追及している。
岐路に立つ日本の外交
高市首相の積極的な安全保障政策と、靖国神社参拝を巡る歴史認識が、日中関係の安定を脅かすリスクは無視できない。中国側が経済的圧力や、国際法上無効な「敵国条項」を政治的に悪用する動きを見せる中、日本政府は国際社会における法的根拠に基づいた冷静な対応を継続する必要がある。
高市政権が掲げる「強い日本」の実現は、周辺国との安定した関係の上に成り立つべきである。高市首相が今後、外交的な摩擦を最小限に抑えつつ、保守層の支持と国際的な信頼を両立できるのか。その手腕が試される重大な局面を迎えている。