脱・中国依存の試金石、双日が豪州産「重希土類」輸入で描く新戦略
ニュース要約: 日本の総合商社「双日」が、オーストラリアのライナス社からEV製造に不可欠な重希土類の輸入を開始し、レアアースの中国依存脱却に向けた大きな一歩を踏み出しました。地政学リスクにより国際価格が高騰するなか、官民一体で構築した独自の供給網は、日本の経済安全保障を支える防波堤として投資家や産業界から高い注目を集めています。
【経済時評】脱「中国依存」の試金石、双日が挑むレアアース調達網の新地図――豪州からの重希土類輸入で先行
2026年2月17日 東京
ハイテク産業の「ビタミン」と称され、電気自動車(EV)や再生可能エネルギー機器の製造に不可欠なレアアース(希土類)。その世界市場が、地政学リスクの高まりとともに激震している。中国による輸出規制強化によって国際価格が高止まりするなか、日本の総合商社、**双日(Sojitz)**が展開する「脱・中国依存」の戦略が、日本の経済安全保障を占う試金石として注目を集めている。
15年越しの悲願、豪州産「重希土類」の輸入開始
双日は2025年10月、オーストラリアのレアアース大手、ライナス(Lynas Rare Earths)社から、ハイテク製品の性能を左右する「重希土類」の輸入を日本で初めて開始した。これは、2011年の「レアアース・ショック」以降、同社が15年間にわたって官民一体で推し進めてきた調達多角化戦略の大きな結実といえる。
これまでレアアース供給の9割近くを中国に依存してきた日本にとって、オーストラリアで採掘し、マレーシアの拠点で精錬されたレアアースを安定的に確保できる体制は、極めて高い戦略的価値を持つ。特に今回輸入が始まったジスプロシウムやテルビウムといった重希土類は、EV用モーターの耐熱性を向上させるために不可欠な素材であり、その供給網を中国以外に構築できた意義は大きい。
高騰する市場と双日への期待
2026年に入り、レアアースの国際価格は上昇の一途を辿っている。中国希土類工業協会の指数は1月末時点で、2010年基準の2.4倍を超える242.7まで上昇。特にネオジムやプラセオジムなどの軽希土類、そしてジスプロシウムなどの重希土類は、EV需要の急増と供給不安から記録的な高値圏で推移している。
こうした市場環境は、資源分野に強みを持つ双日の業績押し上げ要因として投資家から好感されている。2026年初頭、同社の調達網拡大が報じられると、株価は上場来高値を更新する場面も見られた。市場関係者は「中国が2025年以降、輸出規制を実質的な対外カードとして使い始めているなか、自前で代替ルートを持つ双日の希少性は高まっている」と分析する。
ライナス社との強固な共闘体制
双日の強みは、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と連携した、ライナス社への戦略的資本参加にある。2023年には、日豪レアアース株式会社を通じて約2億豪ドルの追加出資を実施。これにより、日本市場向けの独占販売権や優先供給権を確保しており、テスラをはじめとする世界のEVメーカーを頂点としたサプライチェーンにおいて、日本の磁石メーカーへ原料を供給する「防波堤」の役割を担っている。
一方で、課題も残る。双日はベトナムなど他の地域での権益確保も模索してきたが、現時点でベトナムのドンパオ鉱山などは開発の進捗が不透明であり、韓国企業などが先行する動きも見られる。現状では「ライナス一本足打法」からのさらなる分散が、次なる戦略目標となるだろう。
経済安全保障の最前線として
日本政府は現在、経済安全保障推進法に基づき、レアアースを含む重要鉱物の国家備蓄を「国内需要の60日分」からさらに引き上げる方針を固めている。南鳥島沖での海底採掘プロジェクトなども進行中だが、商業ベースでの安定供給にはまだ時間を要する。
「特定国への過度な依存は、産業の首根っこを掴まれるに等しい」。かつての苦い教訓を胸に、双日とレアアースを巡る戦いは、単なる商社のビジネスの枠を超え、日本の産業界全体の「生存戦略」へと昇華している。中国の輸出規制という逆風のなか、双日が描く新しい供給網が、日本の製造業にどれほどの粘り強さをもたらすのか。同社の次なる一手から目が離せない。
(経済部・記者)
参考情報源
関連コンテンツ
マイニュースへ
あなた専用のニュースレポートをチェックしましょう