神宮に響く最後の「慎GO!」——代打の神様・川端慎吾、20年の軌跡に幕
ニュース要約: 東京ヤクルトスワローズの川端慎吾選手が2026年3月14日、神宮球場でのオープン戦で引退試合に臨みました。2015年の首位打者であり「代打の神様」として愛された名手は、異例の支配下登録で最後の勇姿を披露。今後は2軍打撃コーチとして、神宮で培った芸術的な打撃技術を次世代に伝承していきます。
神宮に響く最後の「慎GO!」——代打の神様・川端慎吾、20年の軌跡に幕
【2026年3月14日・神宮球場】
春の柔らかな日差しが差し込む明治神宮野球場。2026年プロ野球シーズンの幕開けを告げるオープン戦、対オリックス・バファローズ戦は、単なる調整の場ではなかった。詰めかけた3万人のファンが、背番号「5」の最後の一振りをその目に焼き付けるため、聖地・神宮を緑色に染め上げた。
東京ヤクルトスワローズ一筋20年。2015年の首位打者であり、近年は「代打の神様」として勝負どころで異彩を放った川端慎吾(38)が、現役生活に終止符を打つ引退試合に臨んだ。
異例の「支配下登録」での引退試合
昨年限りで現役を引退し、今季からは2軍打撃コーチに就任していた川端だが、この日のために異例の支配下選手登録がなされた。神宮球場のスタメン発表で「1番・指名打者、川端慎吾」の名がコールされると、地鳴りのような歓声が沸き起こった。
川端にとって、神宮球場は特別な場所だ。通算打率.293、1100安打という金字塔を打ち立てた舞台であり、狭い外野と低いフェンスという神宮特有の形状を熟知した、芸術的な流し打ちの主舞台でもあった。2015年には打率.336を記録し、首位打者と最多安打のタイトルを獲得。ヤクルトのリーグ優勝に大きく貢献した。
試合前、川端は「この神宮はファンの皆さんとの距離が近く、日本で最高の球場。ここで最後を迎えられるのは幸せです」と語った。その言葉通り、球場周辺では「川端慎吾スペシャルカシスオレンジ」や「10年ぶり復刻のすきやき弁当」など、全32種に及ぶ限定グルメが販売され、チケットは前日までに完売。稀代のバットマンへの愛が球場全体に溢れていた。
最後に見せた「選球眼」と「守備の華」
試合は、川端のバッティングスタイルを象徴するような内容となった。第1打席から全打席でゴロに倒れ、結果は4打数無安打。しかし、どの打席でもファウルで粘り、甘い球を逃さない構えには、かつての首位打者の面影が強く残っていた。2023年には代打として出塁率.415という驚異的な数字を叩き出した選球眼は、コーチとなった今も錆びついていない。
特筆すべきは九回の守備だ。指名打者から遊撃のポジションへ向かうと、ファンからは万雷の拍手が送られた。かつてゴールデングラブ賞(2015年・三塁手)を獲得した名手が見せた軽快なステップ。現役生活の最後を慣れ親しんだ内野の土の上で締めくくる演出に、涙を拭うファンの姿も多く見られた。
伝統を次世代へ――「神宮の申し子」から指導者へ
試合後のセレモニーで、川端は後輩たちへエールの言葉を贈った。現在、神宮外苑地区の再開発に伴い、神宮球場は建て替え計画が進んでいる。2030年代には新たな球場へと姿を変える予定だが、川端がこの地で刻んだ勝負強さの記憶は、ヤクルト打線のDNAとして引き継がれていくだろう。
「神宮特有の低弾道の打撃スタイル」――。川端の持つこの技術は、今後2軍打撃コーチとして若手選手たちに伝承される。特に神宮を本拠地とする打者にとって、川端のミート力とギャップヒットの極意は、球場の利を最大限に活かすための至宝の教えとなるはずだ。
「代打・川端」の名前がコールされるたびに、球場全体が勝利を確信したあの熱狂。希代のコンタクトヒッターが去った神宮には、今、新しい風が吹き始めている。
(共同通信/日経新聞 運動部・スポーツ担当記者 2026年3月15日執筆)
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