【J2終幕】熊本vs甲府：ロアッソ残留は地域経済87億円の命運を握る最終決戦

【J2終幕】残留懸けた「熊本 対 甲府」の最終決戦：ロアッソ、低迷の先に掴む未来と地域経済への責務

2025年11月29日（土） 筆者：共同通信社スポーツ担当

明治安田J2リーグは本日、最終節となる第38節を迎え、各地で熱戦が繰り広げられた。中でも、えがお健康スタジアムで行われたロアッソ熊本とヴァンフォーレ甲府（以下、甲府）の直接対決は、ロアッソのJ2残留の行方を左右する、極めて重要な一戦として、地元熊本はもとより全国のサッカーファンから注目を集めた。

最終盤の低迷、攻撃力不足が招いた残留争い

キックオフを14時に控えたロアッソ熊本は、第37節終了時点で17位に沈み、降格圏（18位以下）との勝ち点差はわずか3ポイントという瀬戸際に立たされていた。自力での残留を確定させるためには、この熊本 対 甲府戦での勝利が絶対条件となる。

両チームともに苦しいシーズン終盤を迎えており、試合前の状況は極めて深刻だった。ロアッソ熊本は直近8試合で勝利がなく、特に攻撃面で課題を露呈。直近5試合でわずか2得点と、得点力不足が深刻化し、勝ち点を積み上げられない要因となっていた。一方、甲府も3連敗中であり、直近5試合で2得点と、同様に攻撃の停滞に苦しんでいた。

過去の対戦成績は甲府が優位に立つものの、この最終節は、両チームの低迷する攻撃陣の中で、セットプレーやカウンターの精度、そして何よりも「残留への執念」が勝敗を分ける展開が予想された。2025年シーズンを総括すると、ロアッソ熊本は40得点、54失点という数字が示す通り、攻守両面で不安定さを抱え、昨季（2024年12位）から順位を大きく落とした結果、この残留争いの渦中に巻き込まれることとなった。

順位以上の価値を持つ「ロアッソ」の存在

順位こそ低迷し、サポーターから「攻撃力不足」「守備のミス」といった厳しい意見も寄せられているが、ロアッソ熊本が地域社会にもたらす影響は、単なるリーグ戦の勝敗に留まらない。

クラブが公開した経済波及効果のデータによると、2023年シーズンにはホームゲームで約13万2000人を動員し、全国に約87億8800万円という巨大な経済効果を生み出している。特筆すべきは、熊本県内におけるスポンサーシップの乗数効果の高さだ。クラブへの100万円のスポンサー投資が、県内のGDPを570万円増加させるという5.7倍の乗数効果を示しており、ロアッソが地域経済の重要な牽引役であることが裏付けられている。

さらに、県への税収貢献は約2億円と見積もられ、観光や地場産業の活性化、さらには健全な青少年育成にも寄与している。つまり、ロアッソ熊本のJ2残留は、単にクラブの存続だけでなく、熊本県全体の経済活動と地域活性化に直結する、重大な社会的な責務を負っていると言える。

来季に向けた守備強化と攻撃陣の再構築

もしロアッソ熊本がこの最終決戦で勝利し、J2残留を確定させた場合、来季に向けたチーム再編が急務となる。すでに2026シーズンに向けては、鹿屋体育大学のDF戸田峻平選手や法政大学のDF薬師田澪選手といった守備の要となる若手選手の獲得が内定しており、守備の安定化を図る意図が明確だ。

しかし、今季の課題であった得点力不足の解消は避けて通れない。主力FWの塩浜遼選手（10得点）や神代慶人選手（8得点）が奮闘したものの、チーム全体の得点力はリーグ下位に位置する。残留が確定すれば、ストーブリーグでは彼らの契約更新や、得点源となる新たな攻撃的選手の補強が最大の焦点となるだろう。

最終決戦の先に

2025年シーズンのロアッソ熊本は、厳しい残留争いの末にこの最終節を迎えた。えがお健康スタジアムに集まった熱いサポーターの期待を背負い、熊本 対 甲府戦で勝利を掴み取ることは、クラブが地域社会に対して持つ経済的、社会的役割を継続するための第一歩となる。

勝敗がJ2とJ3の分かれ目となるこの一戦の結果は、2026年以降のロアッソ熊本の未来図を大きく左右する。地域密着型クラブとして、順位以上の価値を持つロアッソの戦いぶりに、引き続き注目が集まる。（了 1188文字）