リンガーハット、営業利益68%増の快進撃：インフレに勝つ構造改革と2026年成長戦略

インフレ圧力下で構造改革を急ぐリンガーハット：営業利益68％増の裏側と「2026年成長戦略」の検証

【東京・長崎】 国産野菜をふんだんに使用した「長崎ちゃんぽん」で知られる外食大手、リンガーハットが、原材料高騰と人件費上昇という二重のインフレ圧力下で、顕著な業績回復を遂げている。2025年2月期の決算では大幅な増益を達成し、続く2026年2月期についても、通期経常利益予想を19.9億円へと上方修正した。これは前期比26.0％増という大幅な伸びであり、単なる価格転嫁に留まらない、全社的な経営体質の改善と戦略転換が功を奏していることを示唆している。

利益率改善の核心：価格戦略と多角化

リンガーハットの2025年2月期決算で特筆すべきは、売上高の伸び（8.9％増）を大幅に上回る営業利益の伸び（68.6％増）である。この高水準の増益は、同社がインフレ環境下で実施した価格戦略の最適化と、徹底したコスト管理の徹底が奏功した結果だ。顧客の受容性を測りながらメニュー価格を適切に調整しつつ、売上原価の効率化を図ることで、利益率を劇的に改善させた。

さらに、飲食事業以外の収益源が成長を牽引している点も見逃せない。機器類の保全やメンテナンス事業の売上高は前年同期比17.2％増、営業利益は42.6％増と高い収益性を確保している。これは、本業である飲食事業の基盤を強化しつつ、事業ポートフォリオの多角化を進めることで、外部環境の変化に強い経営構造を構築しつつあることを示している。

季節商品と新メニューで集客を強化

業績好転を支える重要な要素として、商品力の強化と集客戦略がある。

特に冬季は、毎年恒例の限定メニュー「かきちゃんぽん」が起爆剤となっている。2025年11月4日より全国販売が開始されたこの限定商品は、注文後に豆乳クリームバターで焼き上げる牡蠣の香ばしさと濃厚な旨みが特徴だ。「かきちゃんぽん みそ」や一部店舗で展開されるチゲスープなど、味のバリエーションを広げることで、リピーター獲得と新規顧客の呼び込みに成功している。

定番の「長崎ちゃんぽん」や「皿うどん」といった看板商品を維持しつつも、2025年には「鶏白湯つけ麺炭火焼き鴨肉入り」や「肉味噌まぜ麺」といった新機軸のメニューも投入。多様な顧客ニーズに対応することで、外食市場における競争力を高めている。

構造的な課題：人手不足への「DX」対応

目覚ましい業績改善の裏側で、外食産業が抱える構造的な課題、すなわち人手不足への対応は喫緊の経営課題であり続けている。

リンガーハットはこれに対し、店舗運営の効率化を最優先事項として取り組んでいる。具体的には、調理工程を簡素化する機器の導入、券売機の活用によるオーダー業務の軽減、そしてシフト作成や人件費管理における**DX（デジタルトランスフォーメーション）**ツールの導入を進めている。これにより、店長の負担を軽減し、限られた人的資源を有効活用する体制を築いている。

また、労働環境の改善にも注力しており、外食業界トップクラスの賃上げ交渉を実施し、柔軟なシフト体制や福利厚生の充実によって、優秀な人材の定着を図っている。外国人材の積極的な活用や、エリアマネージャーの育成強化も、今後の持続可能な店舗運営には不可欠な要素となる。

2026年、持続的成長への試金石

通期経常利益19.9億円という新たな目標は、リンガーハットが戦略の転換点に立ち、自信を持って成長路線を歩み始めたことを示している。適切な価格戦略とコスト効率化、そして非飲食事業による収益の安定化が、インフレ耐性の高い企業体質へと変貌させつつある。

しかし、原材料価格やエネルギーコストの変動、さらに深刻化する人手不足対策への継続的な投資は、今後の利益を圧迫する可能性も秘めている。2026年以降も持続的な成長を実現するためには、商品力の維持・強化と、店舗運営のさらなる効率化、そして人材確保に向けた積極的な施策が、引き続き求められる。（了）