【歌舞伎界の最前線】中村鴈治郎、成駒家の誇りと上方歌舞伎の未来を語る――東西の舞台で見せる「当主の矜持」
ニュース要約: 四代目中村鴈治郎は、上方歌舞伎の重鎮として東西の舞台で活躍し、成駒家のブランド確立と次世代への継承に尽力しています。2026年の新春公演や『タモリステーション』出演、映画『国宝』での指導など、伝統を守りつつメディアを通じた普及活動にも精力的に取り組む彼の、表現者としての信念と上方情緒を体現する挑戦的な姿を追います。
【歌舞伎界の最前線】中村鴈治郎、成駒家の誇りと上方歌舞伎の未来を語る――東西の舞台で見せる「当主の矜持」
【東京・中央区】 2026年、日本文化の象徴である歌舞伎界は、さらなる深化と継承の時を迎えている。その中心に立つ一人が、上方歌舞伎の重鎮、四代目中村鴈治郎だ。新春から大阪、そして東京の歌舞伎座へと続くハードな舞台スケジュールをこなしながら、成駒家の当主として、そして一人の表現者として、彼は今どこへ向かおうとしているのか。
大阪から東京へ、舞台で刻む「成駒家」の足跡
2026年の幕開け、中村鴈治郎は自身のルーツである大阪松竹座「寿 初春歌舞伎特別公演」(1月7日〜25日)に立っていた。大阪国際文化芸術プロジェクトの一環として行われた本公演では、長男の中村壱太郎ら次世代の俳優たちと共演。鴈治郎は公演に際し、若手の成長を高く評価するとともに、「上方歌舞伎の華やかさと柔らかさを、この大阪の地から発信し続けたい」と、その使命感を言葉に滲ませた。
続く2月、鴈治郎は東京・歌舞伎座(2月1日〜26日)の舞台へと場所を移した。東西の演劇的差異を楽しみつつ、成駒家としての独自の芸風を披露するその姿は、観客を魅了してやまない。特筆すべきは、2月20日にテレビ朝日系で放送された『タモリステーション』への出演だ。タモリを歌舞伎座の舞台裏へと案内し、舞台装置や音響演出の秘密を明かしたこの番組は、エンターテインメントとしての歌舞伎の奥深さを広く世間に知らしめる機会となった。
「成駒家」への改称と、血脈が紡ぐ伝統
四代目中村鴈治郎を語る上で欠かせないのが、家名へのこだわりである。2015年の襲名以来、彼は屋号を従来の「成駒屋」から、江戸のそれと区別するために「成駒家」へと変更した。家紋「イ菱」を一門で共有し、弟子の持ち物に至るまで時間をかけて移行を進めるなど、独立したブランドとしての「上方・成駒家」の確立を急いでいる。
「初代鴈治郎から続く直系の芸を守る。それは単なる形式のコピーではなく、その時代に響く上方情緒を体現すること」
鴈治郎の言葉通り、彼の演じる役どころは、かつての当たり役である『曽根崎心中』の徳兵衛をはじめ、師愛や色気を併せ持つ上方歌舞伎特有の空気感を纏っている。その血脈は、着実に長男・壱太郎へと引き継がれており、2月20日に京都で行われたシネマ歌舞伎『曽根崎心中』の完成披露上映会では、父子揃って登壇。二世鴈治郎の芸の継承について語るその姿は、伝統が次の100年へと繋がっていく瞬間を感じさせた。
文化の旗振り役として――映画、そして世界へ
鴈治郎の活動は、もはや歌舞伎の枠内だけに留まらない。映画監督・李相日氏との対談や、自身が出演・歌舞伎指導を務めた映画『国宝』の制作など、映像メディアを通じた歌舞伎の普及に尽力している。2025年のヨコハマ映画祭で審査員特別賞を受賞したことは、彼の俳優としての評価がジャンルを問わず確立されていることの証左だろう。
世界的に日本のコンテンツへの注目が高まる中、鴈治郎は「伝統は変化を恐れない」という姿勢を崩さない。妻であり、舞踊吾妻流家元の吾妻徳彌との連携も含め、舞踊指導や後進の育成にも余念がない。
結びに代えて
現在、中村鴈治郎の健康状態について懸念する声などは一切聞かれず、むしろその活動範囲は年を追うごとに拡大している。3月に全国11カ所を巡る「春暁歌舞伎特別公演」には出演しないものの、それは自身の舞台と、次世代へのバトンタッチを冷静に見極めている結果とも取れる。
歌舞伎座の檜舞台からテレビのバラエティまで。四代目中村鴈治郎は、伝統を重荷とするのではなく、それを翼に変えて、今の時代を軽やかに飛び続けている。彼が描く成駒家の未来が、上方歌舞伎の新たな黄金時代を築くことに、疑いの余地はないだろう。
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