J2昇格への重圧と地域力：水戸ホーリーホック、大分戦で決定力不足に沈む

J2激闘終章：水戸、昇格への重圧とホーリーホックの地域力

明治安田J2リーグ第38節 水戸ホーリーホック 対 大分トリニータ

2025年11月29日、明治安田J2リーグはシーズン終盤の重要な局面を迎えた。J1自動昇格圏内を狙う3位の水戸ホーリーホックは、ホーム最終戦となるケーズデンキスタジアム水戸で大分トリニータと対戦。この水戸 対 大分の一戦は、水戸にとって昇格の望みを繋ぐための「必勝」が求められる試合であったが、終始優勢に進めながらも決定打に泣き、シーズン終盤の重圧が色濃く反映される結果となった。

水戸、圧倒も決定力不足に沈む

試合は、昇格への執念を見せる水戸が序盤から主導権を握った。前半20分時点で、水戸はシュート5本（枠内3本）を記録し、ゴール期待値（xG）も0.18と、残留を確定させた大分（xG 0.04）を圧倒。齋藤俊輔、大森博、大崎航詩ら若手選手が積極的にゴールを狙い、攻撃的な姿勢を貫いた。

しかし、肝心のゴールが遠い。水戸は今季、セットプレーからの得点比率が35%超と、効率的な攻撃で勝ち点を積み上げてきたが、この日の決定機は次々と逸した。前節までに上位対決で連敗を喫し、さらに守護神西川が出場停止という守備の不安を抱える中で、攻撃陣は奮闘したものの、シーズン終盤特有の精神的な重圧が、正確なフィニッシュを狂わせた可能性が指摘される。

一方の大分トリニータは、直近3連敗と不調が続く中で、この試合は守備を固める戦術を選択。すでに残留を確定させていたため、プレッシャーから解放された状態ではあったが、攻撃面ではシュート1本に留まるなど、シーズンを通じての得点力不足（第37節時点で得点27）が改めて浮き彫りとなった。この水戸ホーリーホックと大分トリニータの対戦は、昇格争いの重圧と、残留確定後のモチベーションの差が、試合内容に大きく影響した試合と言えるだろう。

地域を巻き込んだ「ホーリーホック」の熱狂

ピッチ上の緊迫した戦いとは別に、このホーム最終戦は、水戸の地域密着活動の集大成として大きな注目を集めた。

水戸ホーリーホックは、石岡市、桜川市など18市町村が加盟する「ホームタウン推進協議会」と連携し、「ホームタウン推進協議会の日」として地域一体型のイベントを展開。キーワードラリーやチームカラー「青」で声援を送る「ブルーチャレンジ」など、サポーター参加型の企画が多数実施された。

特別優待チケットの利用促進により、地域住民のスタジアム来場が劇的に増加。これはスタジアム周辺の飲食店や交通機関への経済効果を生み出し、ホーリーホックが単なるスポーツクラブではなく、地域経済を牽引する重要なインフラとしての役割を果たしていることを示した。また、両クラブのサポーターは、大分市佐賀関地域の大規模火災に対する義援金活動にも協力し、地域課題への関心の高まりも見られた。

浮き彫りになった来季への課題

この水戸 対 大分戦の結果は、両クラブの来季の戦略策定に決定的な影響を与える。

水戸ホーリーホックは、今季の躍進を支えたセットプレーに加え、攻撃の多様化が急務だ。ドリブル突破やスルーパスに長けたMFの補強、そしてGKのセーブ率が低いというデータに基づき、安定感のある守護神の獲得が検討されるだろう。J1昇格を果たした場合、現体制を維持しつつも、より上位リーグに対応できる経験豊富な人材の登用も視野に入る。

一方、残留争いを強いられた大分トリニータは、抜本的な改革が必須だ。攻撃力の向上が最優先事項であり、得点力のあるFWと創造性のあるMFの獲得が急務。また、守備の安定化に向けた経験豊富なCBの補強も必要となる。成績不振により監督交代の可能性が高く、来季は戦術と人事を刷新し、再びJ1昇格争いに食い込める体制を構築できるかが焦点となる。

2025年シーズン終盤の水戸ホーリーホックと大分トリニータの対戦は、J2リーグの熾烈な競争と、プロクラブが地域と共に成長する重要性を再認識させる一戦となった。両クラブは、この経験を糧に、2026年シーズンに向けて新たなスタートを切る。（1150文字）