「きのこの山」50周年への挑戦:大人戦略とグローバル展開で狙う国民的菓子の新境地
ニュース要約: 発売50周年を控える明治「きのこの山」が、従来の子供向け菓子の枠を超えた新戦略を展開中。クラブハリエ監修の大人向け限定商品のヒットや、とにかく明るい安村氏を起用した欧州でのグローバル展開など、ブランド再定義の舞台裏をレポート。宿命のライバル「たけのこの里」との共存やSNSでの参加型ムーブメントを通じ、世代と国境を超えて愛される国民的ブランドの進化に迫ります。
【深層レポート】「きのこの山」発売50周年へのカウントダウン 国民的菓子が仕掛ける“大人戦略”とグローバルへの挑戦
【2026年3月25日 東京】
日本の菓子文化において、半世紀近くにわたり茶の間の話題を独占してきた存在がある。株式会社明治が展開する「きのこの山」だ。1975年の発売以来、姉妹品「たけのこの里」との間で繰り広げられてきた「きのこたけのこ戦争」は、もはや単なる商品の嗜好を超え、日本人のアイデンティティを問う国民的行事へと昇華した。
発売から50周年という大きな節目を翌年に控えた2026年現在、このロングセラーブランドが新たな局面を迎えている。伝統の「里山」のイメージを守りつつ、洗練された「大人向け」へのシフトと、世界市場を見据えた「グローバル展開」という二段構えの戦略だ。
■老舗ショコラティエとの邂逅 「大人」を魅了するヘーゼルプラリネ
今春、菓子業界で大きな話題を呼んでいるのが、2月10日に発売された期間限定商品「きのこの山×クラブハリエ ヘーゼルプラリネ&抹茶」だ。滋賀県近江八幡市の名門バームクーヘン専門店「クラブハリエ」の山本隆夫シェフが監修したこの一品は、従来の子供向けスナックという枠組みを大きく踏み越えている。
特筆すべきはその多層的な味わいだ。カカオ香るチョコレートと、ヘーゼルプラリネに抹茶を練り込んだ2層構造のチョコキャップを採用。さらにキャラメルパウダーやクラッシュキャンディを練り込むことで、複雑な食感と香ばしさを演出している。1月に行われたバレンタイン先行販売では、JR名古屋タカシマヤ等で完売が相次ぐなど、感度の高い層から圧倒的な支持を得た。
明治は近年、2025年発売の「発酵バター&キャラメル」など、付加価値を高めた限定フレーバーを相次いで投入している。背景には、少子高齢化に伴う購買層の変化がある。かつての「きのこの山」ファンが大人になり、より質の高い「贅沢なひととき」を求める中で、ブランドの再定義を迫られているのだ。
■「ノーサイド」から「共存」へ SNS時代の派閥抗争
「きのこの山」を語る上で避けて通れないのが、宿命のライバル「たけのこの里」との勢力争いだ。2001年に始まった「国民総選挙」は、2019年にきのこ党が悲願の勝利を収め、両者が「ノーサイド協定」を結ぶことで公式な戦いに終止符が打たれたかに見えた。
しかし、ファンの熱量は衰えていない。2025年3月に行われた47都道府県別の調査では、たけのこ党が全県で僅差の勝利を収めるなど、依然として「たけのこ優勢」の状況が続いている。SNS上では、今もなお独自の「アレンジレシピ」や派閥論争がミーム(流行)として拡散される。公式が提案する「きのこの山アイス」を筆頭に、チョコを抜いたクラッカー部分のみを活用した「チョコぬいじゃった!アレンジ」など、消費者が自ら遊び方を見出す「参加型ブランド」としての地位を確立している。
■「KINOTAKE」から世界へ 安村氏が繋ぐグローバルな絆
国内での地位を盤石にした今、明治が次に見据えるのは世界だ。2023年に開催された「KINOTAKE GLOBAL SUMMIT」を契機に、海外展開は一気に加速した。
2024年夏には、英国のオーディション番組で一躍時の人となった「とにかく明るい安村」氏をグローバル大使に任命。フランスやイギリスでのPR活動では、欧州の消費者から「テクスチャーが素晴らしい」「ナイスコンビネーション」といった高い評価を得た。当初は「CHOCOROOMS」といった名称での展開も検討されたが、現在は「Kinoko no Yama」というオリジナルの呼称を軸に、日本発のポップカルチャーとしての認知を広げている。
■誕生の秘話と「不変」の美学
「きのこの山」の原点は、1969年に発売された「アポロ」の失敗に遡る。余剰となった生産ラインを活用しようと、当時の技術者が試行錯誤の末に生み出したのが、チョコとクラッカーを組み合わせた「きのこの形」だった。開発当時は「奇抜すぎる」との反対もあったが、里山風景を描いた緑のパッケージとともに1975年に発売されると、爆発的なヒットを記録した。
誕生から50年。高度経済成長期の「自然回帰」への憧憬から生まれたこの小さな菓子は、今や日本を代表するナショナルブランドとなった。2026年。新たなフレーバーやグローバル総選挙という武器を手に、「きのこの山」は、世代と国境を超えて愛される「国民の原風景」を目指し、その歩みを止めることはない。
(経済部・記者)
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