【期限迫る】定額減税補足給付金、未申請世帯の行方と政策効果を検証
ニュース要約: 多くの自治体で申請期限を迎えた定額減税補足給付金について、未申請世帯への対応や、制度の公平性・周知徹底の課題が浮き彫りになっている。本稿では、給付金と定額減税を組み合わせた経済対策の即効性と持続性を検証するとともに、2026年度予算に向けた低所得者支援策や、給付の迅速化に必要な行政デジタル化の課題について論じる。
迫る「定額減税補足給付金」の終幕:未申請世帯の行方と、政策の実効性を問う
2025年11月14日
長引く物価高騰を受け、政府が推進してきた経済対策の中核である「給付金」と「定額減税」。なかでも、定額減税の恩恵が十分に受けられなかった世帯を救済するための「定額減税補足給付金(不足額給付)」は、制度の公平性を担保する重要な役割を担ってきました。
しかし、この補足給付金について、多くの自治体で申請期限が既に終了、または極めて切迫している状況にあります。
現状:期限切れ後の「駆け込み」と行政の対応
情報によると、多くの自治体では、補足給付金の申請期限を2025年10月31日としていました。期限を過ぎた現在、原則として新規の申請は受け付けられていません。
にもかかわらず、本制度の対象でありながら申請漏れが生じている世帯は少なくないと見られています。これを受け、一部の自治体では、期限を延長する動きや、未申請者向けのコールセンターを継続し、特例的な事情がないかどうかの個別相談を受け付けています。補足給付金は、令和6年分の所得情報に基づき、本来受けるべき減税額との差額を補填するものです。未申請の心当たりのある世帯は、居住地の自治体窓口に早急に問い合わせることが求められます。
この申請漏れの多発は、制度の複雑さと、国民への周知徹底の難しさを改めて浮き彫りにしました。給付金の迅速性と公平性を両立させる行政の課題は依然として重いと言えるでしょう。
経済効果の検証:短期の「給付」か、持続の「減税」か
2025年度の経済対策において、「補足給付金」を含む給付金政策は、消費押し上げにどの程度貢献したのでしょうか。専門家の分析では、以下のような評価がされています。
- 給付金の即効性: 住民税非課税世帯向けの給付金は、現金が直接手元に届くため、特に低所得層の消費性向が高い層において、短期的な消費押し上げ効果が最も高かったと評価されています。
- 定額減税の持続性: 一方、定額減税は中間所得層の可処分所得を押し上げ、長期的な消費を下支えする効果が期待されました。ただし、低所得世帯への恩恵が限定的であったという公平性の課題も指摘されています。
- 補足給付金の役割: 補足給付金は、減税の恩恵から漏れる層をカバーし、政策の網羅性を高める役割を果たしましたが、全体の経済押し上げ効果は限定的と見られています。
総じて、岸田政権が目指した「給付と減税のハイブリッド」政策は、低所得層への生活支援と中間層への負担軽減という二重の目標を掲げましたが、財源確保や公平性の確保といった課題は次期政策への宿題として残されています。
2026年度予算に向けた次の課題
足元では、次期(2026年度)予算に向けた議論が活発化しています。立憲民主党は、中低所得者世帯を対象とした大規模な「物価高・食卓緊急支援金」や、食料品の消費税率を時限的に0%とする大胆な提案を行いました。
政府与党内でも、既存の給付制度の経験を踏まえ、より効果的で対象を明確にした低所得者向け支援の構築が模索されています。特に、子どもの貧困対策として、給付金の増額を求める声も強く、標的を絞った支援の重要性が高まっています。
行政デジタル化への期待と現実
こうした給付金政策の実施において、支給遅延は長年の課題でした。政府は、デジタル技術の活用を積極的に推進し、自治体の事務負担軽減と迅速な給付を目指しています。しかし、地方公共団体ごとのシステムや処理能力には依然としてばらつきがあり、全国一律での迅速な対応には至っていません。
今後は、国主導による給付支援サービスの開発や、自治体におけるデジタル活用の促進が不可欠です。国民生活に直結する支援策であるだけに、制度設計の透明性と、実務における迅速かつ公平な対応が、行政に対する信頼を左右する鍵となるでしょう。
(了)