国会議員「歳費」改革の行方:増額 vs 2割削減の激突と政治の信頼回復への道
ニュース要約: 国会議員の歳費改革が再燃。自民党の増額案に対し、維新は2割削減の「身を切る改革」を主張し対立。高額な歳費に加え、使途不透明な月額100万円の「調査研究広報滞在費」が国民の不信を招いている。政治の信頼回復には、抜本的な制度改革と透明性の確保が不可欠だ。
国会議員「歳費」改革の行方:増額案と「身を切る改革」の狭間で問われる政治の信頼
【東京】 現在、国会議員の報酬体系、とりわけ「歳費」のあり方を巡る議論が、国民の厳しい視線の中で再燃している。2025年11月現在、自由民主党を中心に月額歳費を5万円引き上げる歳費法改正案が提出される見通しである一方、日本維新の会からは「身を切る改革」として2割削減を求める法案が提出されており、国会内では両極端な主張が鋭く対立する異例の状況となっている。
この論争の核心には、長年据え置かれてきた国会議員 歳費の妥当性、そして歳費とは別に支給される経費の透明性という二つの大きな課題が横たわっている。
歳費増額案の波紋:国民所得との乖離
現在、国会議員に支給される歳費は月額129万4000円で固定されており、期末手当(ボーナス)を合わせると年間総支給額は約2190万円に上る。これは1999年以降、長らく据え置かれてきた水準である。
自民党が検討している歳費増額案は、月額を134万4000円に引き上げるというもので、実現すれば年間総支給額は約270万円の増額となる見込みだ。しかし、この増額案に対し、国民からは強い批判の声が上がっている。
日本の平均的な家計年収が400万円台前後であるのに対し、国会議員 給与の総額は、各種手当を含めると約2500万円にも達する。国民の平均所得と比べ、議員報酬が突出して高額であるという事実は、政治家が国民生活の実情から乖離しているのではないかという不信感を募らせる原因となっている。
特に、2005年に廃止された歳費の自動連動制を顧みず、民間の賃上げを理由に政治家自らが報酬を引き上げようとする姿勢は、「国民には痛みを強いる一方で、政治家には甘い」という批判を招いている。
これに対し、日本維新の会は、国民の負担感を軽減し政治の信頼を回復するためとして、歳費と期末手当の2割削減を柱とする「身を切る改革」を強く主張し、具体的な法案で対抗している。
不透明な経費:「第二の文通費」問題
国会議員 給与の議論を複雑にしているのが、歳費とは別に支給される各種手当、特に「調査研究広報滞在費」(旧:文書通信交通滞在費、通称「文通費」)の存在である。
この費用は月額100万円が非課税で支給されるが、その使途の公開義務が法律上規定されていないため、「第二の文通費」として長年、使途の不透明性が問題視されてきた。事務所費や人件費などに充てられるとされるものの、過去には海外投資への流用や、当選直後の議員に満額支給されるなど、国民の理解を得がたい事例が相次いでいる。
2022年の法改正で名目は変更されたものの、実質的な使途公開の規定は依然として不十分なままだ。政治の透明性を確保するためには、歳費そのものの水準議論と並行して、この調査研究広報滞在費の使途公開義務化、あるいは制度自体の抜本的な見直しが不可欠である。
国際比較で見る日本の歳費水準
日本の国会議員 歳費は国際的に見ても高水準にある。国民一人当たりGDPに対する議員年収の倍率を比較すると、日本は約5.38倍と、アメリカ(約2倍)やイギリス(約2.22倍)といった先進国を大きく上回る。
名目上の年収額(約2190万円)も、アメリカ議員(約1740万円)、イギリス議員(約1600万円)より高く、世界の主要国の中でトップクラスに位置づけられているのが現状だ。
ただし、国際比較においては、日本の議員報酬には非課税の定額手当が含まれている点が留意されるべきである。海外では多くの場合、出張や活動経費は実費精算方式が取られており、制度の違いが単純比較を難しくしている。しかし、この制度の違いこそが、日本の議員報酬体系が「経費」と「報酬」の区別が曖昧であるという構造的な問題を示している。
求められる抜本的な制度改革
現在国会で議論されている歳費問題は、単なる増減の是非を超え、政治家が国民の負託に応えるに足る倫理観と透明性を持っているのかという、政治の根幹に関わる問いを突きつけている。
自民党の増額案が2028年以降の実施を見込む中、国民感情を無視した拙速な決定は、政治不信をさらに深めることになりかねない。政治の信頼回復には、「身を切る改革」の実行や、不透明な経費の廃止・公開義務化など、国民が納得できる水準と透明性を確保するための抜本的な制度改革が急務となっている。日本の民主主義の健全な発展のためにも、国会議員には、自らの報酬体系に対して、より厳格な説明責任が求められる。(了)