【独自】「石化の米」ナフサ供給網に激震、中東緊迫と円安でコスト急騰。バイオ転換への岐路に立つ日本産業
ニュース要約: 中東情勢の緊迫と歴史的な円安により、日本の製造業を支える「ナフサ」の供給網が危機に直面しています。輸入価格の急騰で石化各社はプラント稼働率を下げ、日用品の値上げも懸念される事態に。地政学リスクが露呈する中、化石燃料依存からの脱却を目指す「バイオナフサ」への転換など、日本の石油化学産業は構造改革という大きな分水嶺に立たされています。
【独自】揺らぐ「石化の米」ナフサ供給網 中東緊迫と円安が直撃、バイオ転換への岐路
【東京】 日本の基幹産業を支える「石化の米」ことナフサが、かつてない荒波に揉まれている。2026年3月現在、緊迫化する中東情勢を受けた供給懸念と、1ドル=157円台まで進行した円安のダブルパンチにより、国内の石油化学業界は深刻なコスト増と調達不安に直面している。三菱ケミカルグループなどの主要各社はプラントの稼働率引き下げを余儀なくされており、プラスチックや合成繊維といった川下製品への価格波及も避けられない見通しだ。
■乱高下する「ナフサ」価格、円安が輸入コストを押し上げ
財務省の貿易統計および業界推計によると、2025年第4四半期(10-12月)の輸入ナフサ価格は1キロリットルあたり6万5600円と回復傾向にあったが、2026年1月には6万2568円(速報値)と一時的に低下した。しかし、足元の3月に入り情勢は一変している。
背景にあるのは、原油価格の急騰と為替の連動だ。3月第2週の原油価格は前週比で23%超も上昇し、1バレル=85.74ドルに達した。これに157円台の円安が加わったことで、ドル建ての海外ナフサ価格が20%以上急騰し、国内への輸入価格を猛烈に押し上げている。この影響を受け、2026年4-6月期の国産ナフサ価格は7万3500円前後に達するとの予測もあり、石化各社の収益を大きく圧迫している。
■「中東リスク」が露呈する供給網の脆さ
日本のナフサ調達構造の脆弱さも改めて浮き彫りとなっている。現在、日本はナフサの約6割を輸入に依存し、そのうち約7割を中東産が占める。イラン攻撃やホルムズ海峡の封鎖懸念といった地政学リスクにより、3月下旬到着予定のタンカーが湾内で滞留する事態も懸念され始めた。
「原油の国家備蓄は250日分あるが、ナフサの専用備蓄は国内で約20日分と極めて薄い」と業界関係者は指摘する。供給途絶のリスクに対し、三菱ケミカルは茨城・鹿島のエチレンプラントで稼働率を低下させ、出光興産も千葉や山口の設備について停止の可能性を検討するなど、異例の警戒態勢に入っている。供給逼迫(ひっぱく)により、1.5カ月後には国内在庫が不足するとの悲観的な見方も浮上している。
■川下製品への波及と「価格伝播」のタイムラグ
ナフサ価格の上昇は、我々の生活に身近な製品の価格にも直結する。ナフサを原料とするエチレンやプロピレンの生産コストが上がれば、プラスチック容器、衣料用繊維、合成ゴムなどの卸売価格に段階的に転嫁されるからだ。
ただし、その波及にはタイムラグがある。過去のデータでは、原油・ナフサの価格変動が国内製品価格に完全に浸透するまでには約1年を要するとされる。スチレンモノマーのようにナフサ価格と密接に連動する原料がある一方で、樹脂全般の価格は長期スパンで平準化される傾向にある。しかし、今回の急激なコスト増は「これまでの価格体系では吸収しきれない」との見方が強く、春以降、様々な日用品の再値上げラッシュが起こる可能性は極めて高い。
■脱炭素の急務、注目される「バイオナフサ」への転換
この危機的状況を打破する鍵として期待されているのが、廃食用油などを原料とする「バイオナフサ」への転換だ。三井化学は、2021年から業界に先駆けてナフサクラッカーへのバイオナフサ投入を開始しており、出光興産やレゾナック(旧昭和電工)も導入を加速させている。
バイオナフサは、ライフサイクル全体でのCO2排出量を大幅に削減できるだけでなく、化石燃料依存からの脱却というエネルギー安全保障の観点からも重要視されている。再生可能ナフサの市場規模は2026年に27.5億ドルに達すると予測されており、政府による政策的支援も追い風となっている。
■構造改革を迫られる日本の石化産業
アジア全体に目を向けると、中国や韓国でもナフサ価格の高止まりによる「コスト割れ」が深刻化しており、プラントの合理化や生産集約が加速している。日本の石化メーカーも、単なるコスト転嫁にとどまらず、原料の多様化や、付加価値の高い「グリーン化学品」へのシフトなど、ビジネスモデルの抜本的な転換が求められている。
3月現在の地政学イベントが引き金となった需給逼迫は、一過性の問題ではなく、日本のエネルギー戦略そのものへの警鐘とも言える。2026年後半に向け、ナフサという「血管」の目詰まりをどう解消し、持続可能な産業構造を築くのか。日本の石油化学産業は、いま大きな分水嶺に立っている。
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