「財政の崖」か「成長の果実」か――小幡績氏と高橋洋一氏、衆院公聴会で火花散る円安論争
ニュース要約: 2026年3月の衆議院予算委員会公聴会にて、経済学者の小幡績氏と高橋洋一氏が登壇。記録的な円安を「国益」とする積極財政派の高橋氏と、「国難」と断じる慎重派の小幡氏が真っ向から対立しました。インフレ下での財政規律や経済成長の在り方を巡り、日本経済の進むべき道について国民に重い問いを投げかける激論となりました。
【経済時評】「財政の崖」か「成長の果実」か――小幡績氏と高橋洋一氏、衆院公聴会で火花散る円安論争
【東京】 2026年3月11日現在、日本経済は大きな転換点を迎えている。前日に開催された衆議院予算委員会の公聴会において、日本を代表する二人の経済論客、慶應義塾大学大学院の小幡績教授と嘉悦大学の高橋洋一教授が公述人として登壇。高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」と、止まらない「円安政策」の是非を巡り、真っ向から対立する激しい論争を展開した。
かつてアベノミクスの評価を巡って火花を散らした両者の対立は、2026年の今、より深刻な「国家の存亡」を懸けた理論闘争へと深化している。
円安は「国益」か「国難」か
今回の論争の最大の焦点は、生活を直撃している記録的な円安の捉え方だ。
高橋洋一氏は、元財務官僚としての知見を背景に、円安を「経済成長の起爆剤」と位置づける。高橋氏は、円安によって外貨準備高の円換算益(為替差益)や税収が大幅に増加している現状を強調。「円安によって財源が確保しやすくなっており、これを積極財政に活用すべきだ。統合政府のバランスシートを見れば、金利が上昇しても政府の金融資産からの収入増で相殺できるため、財政破綻はあり得ない」と、楽観的な見通しを示した。
これに対し、行動ファイナンスとバブル理論の専門家である小幡績氏は、円安を「通貨安競争による近隣窮乏化」と切り捨て、強い危機感を露わにした。小幡氏は「円安は10%進行するごとに、日本の経済成長率を0.4%押し下げる」という具体的な数値を提示。内閣府のモデルを引き合いに出しながら、「円安は国益に最も反する事態であり、日本を相対的に貧しくさせている。今の積極財政は数値的な裏付けのない『気合だけ』の政策だ」と厳しく指弾した。
財政再建を巡る埋まらない溝
両氏の対立の根底には、経済哲学の根本的な違いがある。
小幡氏は、著書『すべての経済はバブルに通じる』でも説いているように、市場の不合理性とバブル崩壊のリスクを重視する立場だ。そのため、**MMT(現代貨幣理論)**的な「国債はいくら発行しても大丈夫だ」という言説を「市場の信認を無視した暴論」と批判し、厳格な財政規律の回復を訴える。小幡氏によれば、インフレ下でのバラマキは国債の買い手離れを招き、取り返しのつかないバブル崩壊を招くという。
一方の高橋氏は、依然としてデフレ脱却を最優先課題とし、マネタリーベースの拡大による実質金利の低下が投資を呼び込むというリフレ派の論理を堅持する。高橋氏は、老朽化したインフラ更新を例に挙げ、「他国並みの公共投資を行うことは、経済の好循環を生むために不可欠だ」と主張。消費増税が過去の失敗の要因であるとし、減税や積極的な財政出動こそが唯一の正解であるとの持論を展開した。
SNSで過熱する視聴者反応
この論争は永田町や霞が関に留まらず、SNS上でも大きな波紋を広げている。YouTubeでライブ配信された公聴会の様子は瞬く間に拡散され、両氏の支持層による激しい場外乱闘も勃発している。
高橋氏の「わかりやすく、エンターテインメント性の高い」解説は、積極財政を支持する層から熱狂的な支持を集める。一方で、小幡氏の「市場の暗部を突く慎重な」指摘は、一部で「不安を煽っている」という批判を受けつつも、インフレに苦しむ冷静な現役世代からは「もっともな正論」として評価されている。
2026年後半、日本経済の行方
日銀が段階的な金利のギアシフトを模索する中、日本の舵取りは困難を極めている。小幡氏が警告するように円安による成長鈍化が現実のものとなるのか、あるいは高橋氏が予測するように税収増が財政を支え、日本が再び成長軌道に乗るのか。
2026年度予算案の成立を前に、二人の論客が提示した極端なまでの「対比」は、我々国民に対し、「どのようなリスクを取り、どのような未来を望むのか」という重い問いを突きつけている。
(経済部記者:2026年3月11日 記)
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