エンゼルス、史上最悪の「不良債権」レンドン契約を清算へ バイアウトで再建資金を確保

レンドンの巨額契約、ついに幕引きへ　エンゼルス、史上最悪の「不良債権」をバイアウトで清算か—2026年再建へ補強資金確保の道—

ロサンゼルス・エンゼルスのアンソニー・レンドン内野手（35）が、球団との間で残りの契約を巡るバイアウト（契約買い取り）交渉を進めており、そのまま現役を引退する見込みであることが2025年11月下旬、米主要メディアによって報じられた。2020年から7年総額2億4500万ドル（約380億円）という球界屈指の大型契約は、度重なる故障と稼働率の低迷により「MLB史上最悪の契約」と酷評されてきた。この契約の清算は、長らく財政的重荷に苦しんできたエンゼルスにとって、2026年シーズンに向けた本格的な再建計画の第一歩となる。

期待と現実の落差：稼働率3割未満の「巨額契約」

レンドンがエンゼルスと契約を結んだ2019年オフ、彼はナショナルズで打点王を獲得し、ワールドシリーズ制覇に貢献するなど、球界最高峰の三塁手として評価されていた。しかし、エンゼルス移籍後のキャリアは、まさに苦難の連続だった。

契約から6年目にあたる2025年シーズンは、左股関節の手術により全休。これまでの6年間で、レンドンは契約期間中の計870試合のうち、わずか257試合の出場に留まっており、稼働率は29.5％という極めて低い水準にある。すでに球団はレンドンに対し、1億6800万ドル（約243億円）を支払っているが、この間の通算WAR（勝利への貢献度）は3.9に過ぎず、年平均0.65という投資対効果の悪さが際立っている。

米メディアは、この契約を「不良債権」と断じ、特に故障が相次ぎながらも高額な年俸が支払われ続けた状況は、エンゼルスのチーム編成と財政を長年にわたり圧迫してきた。

球団を苦しめた「保険未加入」の痛恨の判断

今回のバイアウト交渉の背景には、エンゼルスが抱える深刻な財政問題がある。特に注目されるのは、球団がレンドンの巨額契約に対して、故障時のリスクをカバーする保険に加入していなかったという点だ。仮に保険に加入していれば、5000万ドル（約76億円）程度はカバーできたと指摘されており、オーナーが保険料を惜しんだ結果、球団は莫大な損失を被る事態となった。

2026年シーズンは契約最終年であり、レンドンには3800万ドル（約59億円）の年俸支払いが残っている。今回のバイアウトが成立すれば、球団は残りの年俸の一部を後払いにすることで、即時の財政的負担を大幅に軽減できる見込みだ。

エンゼルスは、この「MLB史上最悪の契約」から抜け出すことで、来オフの自由契約市場やトレード市場において、ようやく積極的な動きが可能となる。

バイアウトが加速させる2026年再建計画

レンドンのバイアウトと引退は、エンゼルスのミナシアン球団本部長が進める再建計画に、決定的な転機をもたらす。

球団はまず、レンドンが空けた三塁のポジションを含む内野手の補強を最優先する見通しだ。また、長年の課題である投手陣、特に先発ローテーションとリリーフの強化も不可欠であり、浮いた資金を投じて即戦力となるベテランや、将来性のある若手との契約を目指す。

レンドン自身は、2024年オフに「野球は仕事。生きていくためにやっている」と発言し、一部で物議を醸した経緯がある。また、2023年にはファンとのトラブルで出場停止処分を受けるなど、グラウンド外での問題行動も少なくなかった。度重なる怪我に加え、こうしたプロとしての姿勢に対する批判も、球団が契約解除を急ぐ要因となった可能性は高い。

高額契約のリスクと教訓

レンドンの事例は、MLBにおける高額な長期契約が、いかに予測不能なリスクを内包しているかを象徴している。優れた実績を持つ選手であっても、怪我やモチベーションの低下といった要因により、球団財政に致命的な打撃を与えかねない。

エンゼルスは、大谷翔平選手の退団後、新たなチームの核となる選手を育成・獲得する必要に迫られている。レンドンのバイアウトは、過去の失敗を清算し、新たなチーム哲学を構築するための痛みを伴うプロセスであると言えるだろう。2026年シーズンに向け、エンゼルスがこの財政的余裕をどのように活用し、競争力を取り戻せるか、今後の補強戦略に注目が集まっている。（了）