極北の挑戦者・志賀紅音、スウェーデンで刻むエースの覚悟とミラノへの軌跡
ニュース要約: 女子アイスホッケー日本代表「スマイルジャパン」の志賀紅音が、スウェーデンでの過酷な挑戦を通じて真のエースへと進化する姿を追う。北米プロリーグを経て北欧の強豪チームで研鑽を積み、管理栄養士の資格も持つ彼女が、姉の葵と共に次世代へ繋ぐ活動や世界への決意を語る。
【ドキュメント・令和】極北の地で「真のエース」へ――アイスホッケー志賀紅音、孤独な挑戦の先に描くミラノの夢
【2026年4月7日 帯広・ストックホルム=共同】
氷点下20度。吐く息が白く凍りつくスウェーデン北部の街・ルーレオ。女子アイスホッケー界の「静かなるエース」、志賀紅音(しが・あかね、25)は今、世界の最前線で己の存在意義を問い続けている。
2026年4月5日に放送されたドキュメンタリー番組『情熱大陸』(MBS/TBS系)で映し出されたのは、かつての「期待の若手」から、日本代表「スマイルジャパン」の命運を背負う孤高のアスリートへと脱皮を遂げようとする、志賀の現在地だった。
■北米から北欧へ、飽くなき挑戦の軌跡
北海道帯広市出身の志賀は、日本女子アイスホッケー界の歴史を次々と塗り替えてきたパイオニアだ。2023-24シーズンには、日本人選手として初めて北米プロリーグ「PWHL(オタワ)」との契約を勝ち取り、得点を記録。その実績を引っ提げ、現在はスウェーデン・女子トップリーグ(SDHL)の強豪、Luleå HF/MSSKでプレーを続けている。
「やらない後悔より、やる後悔」。番組内で繰り返されたこの言葉に、彼女の覚悟が凝縮されている。2022年の北京五輪では、主力フォワードとして日本史上最高位の6位入賞に貢献。しかし、志賀の視線はその先にある。今年開催されたミラノ・コルティナ冬季五輪を終え、チームは9位という結果に終わったが、彼女は立ち止まることを選ばなかった。
「自分自身はまだ、エースになりきれていない。胸を張ってエースだと言える選手になりたい」。五輪後のインタビューで漏らした言葉には、世界との距離を肌で知る者特有の焦燥感と、強い自負が入り混じっていた。
■管理栄養士の顔を持つ「多角系アスリート」
志賀の強みは、氷上の技術だけではない。北海道文教大学時代には、競技と並行して「管理栄養士」の国家資格を取得した。プロとして海外で自炊生活を送る彼女にとって、食事管理は重要な武器だ。栄養学の知識を駆使し、過酷な北欧の連戦を戦い抜くための体づくりを自らコントロールする。
「静かなエース」と評される通り、感情を昂ぶらせる場面は少ない。だが、北極圏に近いルーレオの厳しい環境下、黙々とパックを追う姿は、言葉以上に雄弁に彼女の決意を語っている。公式note「Akane Shiga / 志賀紅音」では、会員限定で英語学習の苦悩や海外生活の本音を綴っており、華やかな舞台裏にある泥臭い努力がファンの共感を呼んでいる。
■姉妹の絆、そして次世代へのバトン
志賀を語る上で欠かせないのが、同じく日本代表として活躍する姉・志賀葵の存在だ。幼少期、姉の背中を追って6歳でホッケーを始めた少女は、いまや姉と共に日本代表の双璧を成す。2026年3月のテレビ出演でも、姉妹で切磋琢磨しながら世界の壁に挑むドラマが大きな反響を呼んだ。
彼女たちの活動は、自身の競技生活に留まらない。来る2026年5月23日、24日には、兵庫県西宮市で「志賀葵・紅音姉妹によるアイスホッケーキャンプ」の開催が予定されている。小中学生を対象としたこのイベントは、世界を知るトッププレイヤーが直接指導に当たる貴重な機会として、募集開始直後から申し込みが殺到している。
「世界で戦う難しさと楽しさを伝えたい」。それは、日本の女子アイスホッケーを文化として根付かせたいという、エースとしての使命感の表れでもある。
■「志賀紅音」が示す新たな地平
北京での躍進から4年、ミラノを経て彼女はさらに進化した。以前のような追いかける立場ではない。今や志賀紅音は、世界のトップランナーの一人として、追われる立場にある。
デンソー北海道に所属しながら、スウェーデンの過酷なリーグを主戦場とするその歩みは、後に続く日本の若手選手たちにとっての道標(みちしるべ)だ。25歳。アスリートとして円熟味を増す年齢を迎え、彼女が真の「エース」として完成される時、日本女子アイスホッケーはまだ見ぬ景色に到達するに違いない。
北欧の短い春が過ぎ、また闘いのシーズンが始まる。志賀紅音の挑戦に、終わりはない。
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