【ミラノ五輪】「ゆなすみ」ペアが刻んだ二刀流の軌跡、高橋大輔氏の魂を継ぎ夢の舞台へ
ニュース要約: ミラノ・コルティナ冬季五輪フィギュアスケートのペアSPに、長岡柚奈・森口澄士組(ゆなすみ)が登場。フリー進出は逃したものの、高橋大輔氏の支援を受け、男子シングルとの「二刀流」に挑む森口と長岡の強い絆が光りました。四大陸選手権銅メダル獲得を経て、日本ペア界の新たな歴史を刻んだ二人の挑戦と、師弟の絆を振り返ります。
【ミラノ発】結成から3年、氷上に刻んだ「二刀流」の軌跡――。ミラノ・コルティナ冬季五輪フィギュアスケートのペア・ショートプログラム(SP)が15日(日本時間16日)行われ、日本代表の「ゆなすみ」ペアこと長岡柚奈、森口澄士組(木下アカデミー)が夢の舞台に立った。惜しくもフリー進出は逃したが、その背景には日本フィギュア界のレジェンド、高橋大輔氏(39)の存在と、異例の挑戦を支えた師弟の絆があった。
■伝説の背中を追って:高橋大輔が後押しした「決断」
森口澄士がスケート靴を履いたきっかけは、2010年バンクーバー五輪で銅メダルを獲得した高橋大輔氏の演技に心を奪われたことだった。以来、森口にとって高橋氏は常に北極星のような存在であり続けてきた。
その憧れの存在が、単なる「目標」から「恩人」へと変わったのが、3年前の大きな転機だ。男子シングルからペアへの転向、そして競技の両立に悩んでいた森口に対し、高橋氏は親身になって相談に乗り、背中を押し続けた。2023年、「かなだい」としてアイスダンスで活躍していた高橋氏は、森口のペアとしての素質を「ラインが非常に美しく、シングルとペアの二刀流をこなす身体能力は驚異的」と絶賛。この言葉が、長岡柚奈との「ゆなすみ」ペア結成を決定づける福音となった。
高橋氏は、プロデューサーや指導者としての立ち位置からも、若い二人の環境整備を支援。コーチの選定や練習拠点の確保に至るまで、日本ペア競技の将来を見据えた「先行投資」として彼らを見守ってきた。
■「ゆなすみ」躍進の1年:四大陸銅メダルから五輪へ
長岡と森口のコンビは、結成からわずかな期間で驚異的な成長を遂げた。2025-2026年シーズン、彼らは日本スケート界の歴史を次々と塗り替えていった。
1月に北京で開催された四大陸選手権。ゆなすみペアはSPで2位、総合3位に食い込み、主要国際大会で日本勢2組目となる銅メダルを獲得した。この快挙は、絶対的エースである「りくりゅう(三浦璃来、木原龍一組)」に続く、日本ペア界の「第二の波」が本物であることを世界に知らしめた。
特筆すべきは、森口の「二刀流」としての実績だ。今季の全日本選手権では、ペアで頂点に立つとともに、男子シングルでも3度目の優勝を果たすという前代未聞の快挙を成し遂げた。シングルとペア、求められる技術も筋肉の使い方も異なる二つの種目。その過酷な挑戦を支えたのは、「高橋大輔さんのように、表現の幅が広いスケーターになりたい」という森口の純粋な情熱と、パートナー長岡との厚い信頼関係だった。
■ミラノの風に笑顔で:次代へ繋ぐ「希望の光」
迎えた2月15日の五輪本番。7番滑走で登場した二人は、大舞台の緊張感の中、堂々とした演技を披露した。ジャンプのミスが響き、上位16組によるフリー進出には届かなかったが、会場を埋めた観客からは惜しみない拍手が送られた。
演技後の取材エリアで、森口は「悔しさはあるが、この舞台に二人で立てたことは誇り。大輔さんからも『自分たちのスケートを信じて』と言葉をもらっていた。強い気持ちでこれからも歩んでいきたい」と前を向いた。
長岡もまた、「森口君の力を信じているから、リフトも全く怖くない」と語る通り、二人の信頼関係は「ゆなすみ」最大の武器となっている。かつて高橋大輔がひとりで切り拓いた日本男子フィギュアの道は、いま、ペアという新たな彩りを加え、次世代へと確実に受け継がれている。
「りくりゅう」が開拓した新世界に、確かな足跡を残した「ゆなすみ」。高橋大輔が種をまき、若い二人が育てた「ペア二刀流」という花は、ミラノの冷たい氷の上で、春を待つ蕾のように力強く輝いていた。
(2026年2月17日 共同通信・スポーツ部)
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