2025年12月23日、今年も残すところあとわずかとなりました。本日の日本、そして世界を駆け巡った主要なニュースをお伝えします。
政治・経済:激動する組織の在り方と税務問題
政界では「官邸の守護神」と称された元内閣官房副長官、杉田和博氏が84歳で逝去されました。警察庁出身の危機管理のプロとして歴代最長の在任期間を誇り、安倍政権以降の官邸主導政治の屋台骨を支えましたが、同時に官僚人事への介入などその強大な権力行使には常に議論が付きまといました[1]。
経済界では、楽天カードが東京国税局から約42億円の追徴課税を受けたことが判明。資金調達の解釈を巡り国税局と対立しており、今後の判断はカード業界全体の税務実務に影響を与える可能性があります[25]。一方で技術革新は止まらず、家電大手の美的集団は、AIと脱炭素化を軸に3年間で500億円以上の研究開発投資を行うと発表。ヒューマノイドロボットやAIマネージャーの展開により、次世代技術リーダーへの転換を加速させています[3]。
海外に目を向けると、アメリカ・シカゴでは観光ブームに沸く一方で、製造業の低迷と深刻な財政危機という二極化が進んでおり、都市経営の難しさが浮き彫りとなっています[10]。
社会・事件:年末の影と変わりゆくメディア、スポーツ
静岡県長泉町では、80代夫婦を拘束し現金1000万円を奪うという凶悪な強盗事件が発生しました。犯人は現在も逃走中で、警察は「闇バイト」との関連も視野に捜査を進めています[6]。また、交通面ではJR外房線で車両点検による大規模な遅延が発生し、帰省ラッシュを前に安定輸送への不安が広がっています[12]。
スポーツ界では明るい話題が届きました。フィギュアスケートの全日本選手権にて、櫛田育良選手が女子シングルとの「二刀流」という異例の挑戦ながら、アイスダンスで銀メダルを獲得[8]。バスケットボールでは、高校冬の祭典「ウインターカップ2025」が開幕し、亡き名将・井上眞一前監督の遺志を継ぐ桜花学園が4年ぶりの王座奪還に向け始動しました[19]。野球界では、巨人の岡本和真選手のメジャー移籍交渉が最終局面を迎えており、レッドソックスなど4球団による140億円規模の争奪戦に注目が集まっています[14]。
エンタメ・カルチャー:新旧交代と新時代の挑戦
芸能界では大きな転機を迎えるニュースが相次いでいます。日本テレビの人気アナウンサー岩田絵里奈氏が2026年3月末での退社を発表[26]。また、女優の広末涼子氏は新東名高速での時速185キロ追突事故により略式起訴され、芸能界のコンプライアンスの在り方に一石を投じています[21]。
一方、新たな一歩を刻む人々もいます。長年在籍した事務所から移籍した坂ノ上茜氏[7]、祖父母の名字を冠した「相馬結衣」へと改名した元AKB48の横山結衣氏[22]が、それぞれ女優としての決意を新たにしています。
テレビ界では、人気番組「クレイジージャーニー」がコスト増や視聴率低迷により2026年3月で終了することが判明[11]。一方で「月曜から夜ふかし」は13年目を迎え、マツコ・デラックス氏と村上信五氏が依然として安定した人気を誇っています[9]。「オールスター合唱バトル」では、SNS発の『ミリオン再生合唱団』が連覇を果たし、現代の音楽エンタメの熱量を証明しました[23]。
年末年始の楽しみも続々と発表されています。石原良純氏が「ドラえもん」での声優挑戦や気象解説で大車輪の活躍を見せるほか[4]、2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』では浜辺美波氏が北政所役に決定[20]。ドラマ界では草彅剛氏主演の『終幕のロンド』が完結し深い感動を呼んだ一方で、1月からは篠原涼子氏とジェシー氏による衝撃のサスペンス『パンチドランク・ウーマン』が始まります[2][13]。
さらに、島根の心霊伝説をテーマにした朝ドラ『ばけばけ』に関連し、松江市の「小豆とぎ橋」が聖地として脚光を浴びるなど、怪談文化が現代に蘇っています[5]。
ライフスタイル:デジタルとカルチャーの融合
テック分野ではAppleがiOS 26.2をリリースし、iPhone 17の不具合修正や新機能追加を行いました[17]。また、Z世代から絶大な支持を得るアイドルグループ「ME:I」の勢いや[27]、累計再生1億回を突破したラッパーKVI Baba氏の活動など、新しい才能がシーンを牽引しています[18]。
身近な話題では、ユニクロとポケモンの30周年記念コラボ[24]、そしてSNSで大人気の「パペットスンスン」の初の一番くじ発売が決定するなど、ファンにはたまらないニュースが届いています[16]。
倫理なき「正義」の破綻:内田樹・猿田佐世氏が説く市民の主体性
ニュース要約: 哲学者・内田樹氏と外交専門家・猿田佐世氏が、倫理なき「上から目線」の正義の限界と民主主義の危機を論じた。両氏は、トランプ時代以降の国際情勢を踏まえ、「新しい戦前」を回避するためには、市民が「一人称の主体性」を回復し、能動的に政治や外交に関与する市民参加型民主主義の再構築が不可欠だと強く訴える。
倫理なき「正義」はなぜ破綻するのか:内田樹氏と猿田佐世氏が問う「一人称の主体性」
哲学者と外交専門家が警鐘、「新しい戦前」を避ける市民の役割
哲学者である内田樹神戸女学院大学名誉教授と、弁護士で特定非営利活動法人(NPO)新外交イニシアティブ代表の猿田佐世氏による対談が、現代社会が直面する倫理と正義の根源的な課題を浮き彫りにし、大きな反響を呼んでいる。両氏は、単なる理論論争に留まらず、トランプ時代以降の国際情勢や日本の安全保障、そして民主主義の危機に至るまで、具体的な社会問題に即した実践的な視点を提示。「一人称で語らない上から目線の正義はもういらない」と強く訴え、市民一人ひとりの主体的な関与こそが、分断された社会と外交を再構築する鍵であると説く。
(2025年12月3日 共同通信)
「上から目線」の正義の限界
内田氏と猿田氏の議論の核心は、現代社会に蔓延する、自己を棚上げにした「正義」の危うさにある。内田氏は、若者時代の社会運動の経験や倫理観の変遷を踏まえ、抽象的な大義名分や、特定の集団の論理を押し付けるだけの正義感が、いかに他者への共感や具体的な行動を阻害してきたかを指摘する。
これに対し、国際人権問題と外交の現場に立つ猿田佐世氏は、政府や権威が独占してきた外交政策の決定過程において、市民の声が排除され続けてきた現状を問題視する。猿田氏が代表を務める新外交イニシアティブの活動は、まさにこの「上から目線」の構造を打破し、主権者としての市民が外交に関わる社会の実現を目指すものだ。
両氏が強調するのは、倫理的な主体性の回復である。自らの経験や責任に基づかない「正しいこと」の主張は、しばしば他者への糾弾や排斥へと繋がりやすい。現代の政治的・社会的な緊張を緩和するためには、個々人が「私はどう考えるか」「私は何をすべきか」という一人称の視点を持つことの重要性が再定義されている。
戦争回避と市民参加型外交の提言
議論は、喫緊の課題である安全保障と戦争回避へと展開する。内田氏は、政治の最大の使命は戦争を避けることにあるとし、現在の国際環境を「新しい戦前」と表現、その回避に向けた外交のあり方を強く求めた。
一方、猿田氏は、トランプ政権の思想的背景やアメリカの外交政策の現実を深く分析し、日本が単に米国の政策に追随するだけでは、真の安全保障は築けないと警鐘を鳴らす。彼女の活動の中核には、「市民が外交民主化を実現する」という明確なビジョンがある。従来の「日本の声」が100%政府の声であったのに対し、猿田氏らのNPO活動を通じて、これまで国際社会に届くことがなかった「沖縄の声」や「福島の声」といった地域の具体的な実態が発信されるようになった。
この市民による外交の試みは、国際的な知日派に対し、政策情報だけでなく「人間味のある実態」を伝えることを可能にする。国際的な紛争や緊張が高まる中で、知識レベルではなく、「共感する力」に基づく外交の必要性が、現代の倫理的課題として重要視されている。
民主主義の危機と平和の継承
両氏の関心は、日本の民主主義が瀬戸際に立っているという共通認識によって結びついている。内田氏は著作『民主主義は終わるのか』などで危機を警告し、猿田氏もまた国際人権問題の専門家として現場から民主主義と人権の課題に取り組んでいる。両氏は山口二郎氏らとともに『日本のオルタナティブ:壊れた社会を再生させる18の提言』を共著するなど、壊れた社会の再生に向けた具体的な提言を続けている。
特に、平和運動の継承は喫緊の課題だ。2025年11月に開催された第62回護憲大会の分科会で登壇した猿田佐世氏は、被爆者の高齢化(平均年齢86歳超)が進む中で、「平和運動は労働組合の肩にかかっている」と述べ、現世代の責任と次世代への継承を強調した。
内田樹氏と猿田佐世氏の対話は、現代の日本社会に対し、受動的な有権者ではなく、主権者として能動的に政治・外交・人権問題に関わることの必要性を強く訴えかける。それは、上からの決定ではなく、市民の共感と参加に基づく民主主義の再構築を目指すものであり、混迷を深める国際情勢の中で、私たちは今一度、自らの足元にある「正義」と「倫理」を問い直すことを迫られている。(了)