【深層レポート】変革期の「鳥貴族」 創業40周年の原点回帰と「脱・低価格」への挑戦
ニュース要約: 創業40周年を迎えた鳥貴族の戦略を詳報。原材料高騰の中、390円均一価格を維持しつつ、復刻メニューやZ世代向け施策でブランド力を強化。2030年の国内外1,500店舗体制を目指すグローバル展開や、DXによる現場効率化の現状を解説します。バーガー事業撤退を経て、本業の焼き鳥で世界に挑む同社の現在地に迫ります。
【深層レポート】変革期の「鳥貴族」 創業40周年の原点回帰と「脱・低価格」への挑戦
2026年3月14日 10:00
満開の桜を目前に控えた2026年春、日本の外食シーンを牽引する焼き鳥チェーン「鳥貴族」が、大きな転換点を迎えている。原材料費の高騰や深刻な人手不足といった逆風が吹き荒れる中、同社は「全品均一価格」というアイデンティティを死守しつつ、デジタル化とグローバル展開を加速させている。創業40周年という節目に、鳥貴族はどのような未来を描いているのか。その現在地を追った。
創業40周年の「うぬぼれ」と復刻メニューの戦略
現在、鳥貴族では『うぬぼれ続けて創業40周年 ありがとうフェア』の第4弾が開催されている(3月31日まで)。今回の目玉は、単なる新商品ではない。過去の人気メニューの「復刻」と「原点回帰」だ。
希少部位である「まつば」を使用した「骨付きV(ぶい)チキンだし味」や、約15年ぶりの復活となった「赤ウインナーエッグ」など、長年のファンを唸らせるラインナップが揃う。特に「チキンマリネ」は創業当時の味付けを再現しており、390円均一という枠組みの中で、いかに「トリキらしさ」を再定義するかに腐心している様子が伺える。
また、Z世代を中心とした若年層の取り込みも抜かりない。世界的な人気を誇るグループ「SEVENTEEN」のメンバーが絶賛したスープを使用した「鶏塩玉子ラーメン」をグランドメニューに昇格させるなど、SNSでの拡散性を意識したメニュー戦略が功を奏している。
「390円均一」の攻防と堅調な業績
昨今のインフレ経済下で、最も注目されているのが価格戦略だ。鳥貴族は2025年5月1日、全品均一価格を370円から390円(税込)へと引き上げた。2023年、2024年に続く3年連続の改定となるが、特筆すべきは「均一価格体制」を頑なに維持している点だ。
「焼鳥屋で世の中を明るくする」という理念のもと、メニューごとの価格差をつけない不器用なまでのこだわりは、結果としてブランドへの信頼に繋がっている。2026年7月期の業績予想では、売上高600億円、営業利益60億円(営業利益率10%)という強気の数字を掲げる。最新の決算資料によると、既存店売上高は前年同期比105.8%と好調に推移しており、客単価の上昇を客数の維持でカバーする理想的な構造が見て取れる。
焼き鳥を「世界の言葉」へ――2030年1,500店舗構想
国内市場が成熟する中、エターナルホスピタリティグループ(旧・鳥貴族ホールディングス)は視線を世界に向けている。同社は2030年までに「国内1,000店舗、海外500店舗」という壮大な目標を掲げている。
国内では福島県(郡山なかまち夢通り店)や大分県(別府店)といった未出店エリアへの攻勢を強める一方、海外では米国・西海岸や東アジアを重点地域に据える。2025年の中国本土進出に続き、2026年はアジア圏での多店舗展開が本格化する見通しだ。
特筆すべきは、ブランドの多角化だ。ミシュラン一つ星の名店「焼鳥 市松」との合弁会社設立や、「やきとり大吉」の買収を通じ、大衆店から高級店までを網羅する「焼き鳥ポートフォリオ」を構築している。一方で、「トリキバーガー」からの完全撤退(2026年3月)を決断。経営資源を本業の「焼き鳥」に集中させる姿勢を鮮明にした。
DXが変える「赤提灯」の現場
かつて「注文は店員を呼んで」が当たり前だった居酒屋の風景も、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって一変した。鳥貴族ではモバイルオーダーシステムを標準化。自身のスマートフォンでQRコードを読み取り注文するスタイルは、オペレーションの効率化だけでなく、データの蓄積という副産物をもたらした。
「注文の取りこぼしが減り、スタッフは接客や焼きの技術向上に時間を割けるようになった」と現場の評価は高い。また、ミステリーショッピングリサーチを活用した提供時間の計測など、数値に基づいたクオリティ管理も徹底されている。
結びに代えて
1985年の創業から40年。鳥貴族は「安くて美味しい焼き鳥」という原点を守りながら、テクノロジーとグローバル戦略という新たな武器を手に取った。390円というコイン数枚で得られる「小さな幸せ」を、日本全国、そして世界へ。トリキの挑戦は、居酒屋文化そのものの進化を象徴している。(経済部記者・執筆)
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