札幌ドームがV字回復?「プレミストドーム」再出発と黒字化への執念
ニュース要約: 日ハム移転後の巨額赤字に苦しんだ札幌ドーム(現・大和ハウス プレミストドーム)が、2026年3月現在、劇的な経営改善を見せています。ネーミングライツ売却やイベント誘致の多角化により、2025年度は黒字化の見通し。新コンサートモードの活用や周辺再開発を含め、「負の遺産」脱却を懸けた多目的拠点への変貌と、依然として厳しい市民の視線を追います。
【札幌】「負の遺産」からの脱却か、それとも薄氷の経営か――。
かつてプロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地として栄華を誇った「札幌ドーム」(現・大和ハウス プレミストドーム)が、激動の転換期を迎えている。2023年の日ハム移転後、一時は年間約6.5億円という巨額赤字に沈み、存続さえ危ぶまれた北の聖地。しかし、2026年3月現在、運営母体の株式会社札幌ドームは、なりふり構わぬ多角化戦略と徹底したコスト管理により、劇的な「V字回復」の兆しを見せている。
迷走と批判の象徴とされた「新モード」の現状、そしてネーミングライツ売却による収支改善の舞台裏を追った。
■「10億円の暗幕」に差した光明と、消えない不安
札幌ドームの苦境を象徴していたのが、2023年3月に約10億円を投じて導入された「新コンサートモード」だ。巨大な暗幕でドーム内を仕切り、キャパシティを1万人〜2万人規模に最適化するこのシステムは、当初「予約ゼロ」という衝撃的なスタートを切った。
「アーティストへの周知不足、そして周辺施設との競合。見通しが甘かったと言わざるを得ない」。市関係者は当時をそう振り返る。実際、2024年度のコンサート実績は、クイーン+アダム・ランバートといった大物による通常モードでの利用に留まり、新モードの稼働は地元の吹奏楽イベントや小規模な音楽フェスなど、収益への寄与が限定的なものに終わっていた。
しかし、2025年度に入り、潮目が変わりつつある。阿部晃士新社長のもと、海外アーティストの誘致やeスポーツ世界大会の開催など、従来の「スポーツ施設」の枠を超えた営業を強化。2025年度の目標稼働率は80%と、日ハム時代をも上回る強気の数字を掲げている。週末の予約はほぼ埋まり、課題であった平日の稼働も、アマチュア大会の利用料9割減免といった「市民開放路線の拡大」により、稼働日数の底上げを図っている。
■「プレミストドーム」として再出発、黒字化への執念
経営改善の大きな柱となったのが、2024年8月に締結された大和ハウス工業とのネーミングライツ(命名権)契約だ。施設名は「大和ハウス プレミストドーム」へと刷新された。当初、年間2.5億円と設定された希望価格には応募が重ならず、「札幌ドーム」ブランドの失墜を印象付けたが、粘り強い交渉の結果、契約を締結。これにより広告収入が安定し、2025年3月期決算では、前年度の赤字から一転、約4,200万円の純利益を計上する見通しとなった。
札幌市もこの動きを後押しする。令和7年度予算では、活用促進費として前年度の2倍以上となる1億3,500万円を計上。イベント誘致の助成金を積み増し、公的資金による「延命」との批判を浴びながらも、地域経済のエンジンとしての機能を維持しようと躍起だ。
■「スポーツ交流拠点」への再開発と地下鉄延伸の夢
ドームの再生は、単体施設の問題に留まらない。現在、隣接する北海道農業研究センター跡地を活用した「スポーツ交流拠点基本構想」が進行中だ。新たなアリーナや屋外スポーツ施設の整備に加え、民間活力を導入した飲食・物販施設の誘致が進められている。
「エスコンフィールド北海道(北広島市)に奪われた活気を取り戻すには、周辺一帯の再開発が不可欠」と指摘するのは、地元商店街の店主だ。その鍵を握るのが、長年の懸案事項である地下鉄福住駅からのアクセスと、地下鉄東豊線の清田方面への延伸計画だ。秋元克広市長はこれらを含めた拠点化を公約に掲げており、2026年現在、PFI方式による民間提案の精査が進んでいる。
■市民の視線は依然として厳しく
「黒字化」という数字上の成果は出たものの、市民の評価は二分されている。 「プロ野球がないドームに、これほどの公金を投じ続ける価値があるのか」 「雪遊び体験やナイトヨガも良いが、かつての熱狂にはほど遠い」
2024年からは、ドームの敷地を活用したスノーモービルツアーやスノーストライダーといった「都市型アトラクション」も開始された。もはやここは、プロの競技場ではなく、巨大な多目的イベントホールへと変貌を遂げている。
札幌ドームが、単なる「コンクリートの巨大な箱」として歴史を終えるのか、それとも「大和ハウス プレミストドーム」として、世界的なエンターテインメントの拠点に生まれ変わるのか。2027年までの中期経営計画が、その存亡を懸けた最後の審判の場となるだろう。北の大地にそびえ立つ銀色のドームは、春の陽光を浴びながら、静かにその答えを待っている。
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