【ダボス会議2026】世界CEO意識調査で判明した「AI格差」と収益成長への危機感
ニュース要約: PwCが発表した第29期世界CEO意識調査によると、自社の収益成長に自信を持つCEOは30%と過去5年で最低を記録。AI投資のROIの低さや地政学リスクが影を落とす一方、中国CEOの楽観姿勢や急成長するESGコンサル市場が新たな注目点となっています。AI実装と人員削減による「選択と集中」を急ぐ、世界経済の転換期を浮き彫りにした報告書です。
【ダボス=共同】 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)の開幕に合わせ、世界最大級のプロフェッショナルサービスファーム、PwC(プリスウォーターハウス・クーパース)が発表した「第29期世界CEO意識調査」の結果は、世界経済の「踊り場」を鮮明に映し出すものとなった。
2026年1月19日に公開された同報告書によると、世界の最高経営責任者(CEO)のうち、自社の今後12カ月の収益成長に「自信がある」と答えた割合は、前年の38%から30%へと急落。2022年の56%から右肩下がりが続き、過去5年間で最低水準を記録した。AI(人工知能)投資の投資利益率(ROI)の偏りや、地政学的な緊張、サイバー脅威などが経営者の心理に冷や水を浴びせている格好だ。
「AI格差」がもたらす収益への懸念
今回の調査で浮き彫りになったのは、AIがもたらす「成長の分水嶺」だ。AIによるコスト削減と収益増の両立を達成したと回答したCEOはわずか12%にとどまっており、多くの企業が膨大な投資に対処しきれず、転換期の「産みの苦しみ」に喘いでいる。
特に技術変革のスピードを最大の懸念事項に挙げる経営者は42%に達した。PwCのグローバル・リーダーシップは、AIが単なるツールではなく、企業の生存を左右する構造的変化であることを強調している。こうした中、PwC自身は「PwC AI Audit for Cash」などの革新的なツールを導入し、数日間を要した監査業務を数分に短縮するなど、AIと監査業務の融合で業界をリードする姿勢を鮮明にしている。
米中で相次ぐリストラ、「選択と集中」の波
マクロ経済の先行き不透明感を受け、PwCは組織の合理化も進めている。米国では監査・税務部門を中心に約1,500人の人員削減を計画。中国市場においても、クライアントの需要減少や経済成長の鈍化を背景に、大規模な人員削減に踏み切ったことが明らかになった。
これは、従来の労働集約型モデルから、AIやテクノロジーを活用した高付加価値モデルへの転換を急ぐ「選択と集中」の表れといえる。PwCは今後3年間で10億ドルを生成AI分野に投じる方針で、マイクロソフトやOpenAIとの提携を強化。コンサルティング業務の主軸を、単純なアドバイザリーからAI実装やガバナンス構築へとシフトさせている。
中国CEOの楽観とグローバルな投資の矛先
興味深いのは、グローバルな自信喪失とは対照的に、中国のCEOが示す強気な姿勢だ。中国の経営者の67%が「今後12カ月の世界経済は回復に向かう」と予測しており、世界平均の61%を上回った。中長期的な視点での市場の弾力性に対する信頼は依然として厚い。
投資先としての魅力度では米国が世界首位を維持しているが、インドへの関心が倍増したほか、中国も再びトップ3に返り咲いた。インドネシア、韓国、ドイツなどのCEOの2割以上が中国市場を有望視しており、地政学的なリスクを抱えつつも、アジア圏が引き続き世界の成長エンジンとしての役割を期待されていることが裏付けられた。
ESGが支える新たな成長ドライバー
一方で、2026年に義務化が進むESG(環境・社会・ガバナンス)情報開示が、PwCの新たな収益源として浮上している。2026年のESGコンサルティング市場は世界規模で約500億ドルに達すると予測されており、特にアジア太平洋地域での需要が急増している。
PwCは2021年から2026年にかけて、ESGをはじめとする新領域で10万人の雇用を創出する計画を継続している。企業の「脱炭素」への道のりを支援するネットゼロ戦略や、法的拘束力を増すサステナビリティ報告書の作成支援など、開示から実践までを一貫してサポートする体制を整えている。
信頼の再構築に向けて
直近のPwC内部の監査品質調査によれば、コンプライアンス遵守率は87.7%と改善傾向にあり、深刻な訴訟や規制上の問題は表面化していない。しかし、報告書は「規制の複雑化が価値創造の障壁になっている」と指摘するCEOが64%に上るという現状を伝えている。
AI、地政学リスク、そしてESG。波乱含みの2026年において、PwCは単なる会計事務所の枠を超え、企業の変革を伴走する「信頼の構築者」としての役割を問われている。不透明な経済環境下で、同社が示す指針は、多くの日本企業にとっても生き残りのための重要な座標軸となるだろう。
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