西川愛也と辰己涼介：契約更改で露呈したパ・リーグ若手外野手の球団評価の差異

パ・リーグ若手外野手の双璧：西川愛也と辰己涼介 契約更改と自主トレに透ける球団評価の差異

2025年11月28日

2025年シーズン、パシフィック・リーグのフィールドを華やかに彩った若きスター外野手、西川愛也（埼玉西武ライオンズ）と辰己涼介（オリックス・バファローズ）。両選手は共にリーグ屈指の守備力を誇り、打線の中核としてチームに不可欠な存在感を確立した。シーズンを終え、彼らが臨んだ契約更改交渉、そして来季への飛躍を期すオフの自主トレ計画からは、球団が彼らの貢献をどのように評価し、どのような成長を期待しているのか、その戦略の違いが透けて見える。

飛躍の西川、初のGG賞が評価軸を変える

まず、大きな話題を呼んだのが西武ライオンズの西川愛也選手だ。プロ8年目にして初の三井ゴールデン・グラブ賞（GG賞）を受賞した西川は、今オフの契約更改で前年1100万円から倍増となる2200万円（推定）へ大幅昇給を果たした。

西川は2025年シーズン、104試合に出場し、打率.264、15本塁打、40打点を記録。特に得点圏打率は.347と勝負強さが際立ち、シーズン終盤には3番打者として定着した。しかし、彼の評価を決定づけたのは、何よりも外野守備における貢献度の高さだ。

「本当に取りたかった賞。常連になって、ファンの人にスタンドに投げたりしたい」と語った西川選手の言葉通り、球団は彼の守備面での覚醒を高く評価した。従来の打撃成績に加え、特別なタイトル獲得という「付加価値」が、大幅昇給という形で報われたと言える。西武の若返りを牽引する存在として、攻守の要としての期待は計り知れない。

安定の辰己、求められるさらなる「インパクト」

一方、オリックスの辰己涼介選手は、具体的な年俸更改情報こそ未公表だが、安定した成績でチームを支えた。2025年シーズンは112試合に出場し、打率.278、12本塁打、52打点、15盗塁をマーク。出塁率.342はリーグトップクラスであり、リードオフマンとして攻撃の起点となる役割を全うした。辰己選手もまた、5年連続でGG賞を受賞するなど、守備面での信頼度は球界随一だ。

辰己選手の場合、成績は西川選手を上回る安定感を見せているものの、球団の評価軸は「チームへの安定した貢献」が主となり、西川選手のような「初のGG賞」という特筆すべきインパクトがなかったため、昇給幅はやや控えめになる可能性が指摘されている。しかし、辰己選手がオリックスの攻守の柱であることに変わりはなく、「チームの中心として活躍したい」という彼の意欲は、来季への大きな推進力となるだろう。

データが示すハイレベルな競争

両選手の成績を詳細に比較すると、パ・リーグ外野手部門の競争がいかにハイレベルであるかが浮き彫りになる。

打撃面では辰己選手が出塁力と安定感で優位に立つが、長打率（西川.435、辰己.420）や盗塁数では西川選手が上回る。両者とも守備率は.990台を維持しており、守備面での貢献度は拮抗している。

来季への布石：自主トレに懸ける課題克服

この熾烈なライバル関係は、オフの自主トレにも影響を及ぼしている。

西川選手は、福岡市内でソフトバンクの中村晃外野手が主宰する合同自主トレに参加。GG賞受賞後も「油断せず、毎日が勝負」という姿勢を貫き、課題である「長打力の安定化」と「外角球への対応力」の強化に注力している。今井達也投手（元西武）からの「勇気のいることをしないと変われない」というアドバイスを胸に、打撃フォームの微修正に取り組んでいるという。

一方、辰己涼介選手は、沖縄や徳之島など温暖な地域で下半身強化や走塁スピードの向上に努めている。辰己選手もまた、打撃面では「長打力の安定化」を目標に掲げ、特に右打者としての外角球対策を徹底している模様だ。若手との交流を通じてチームリーダーシップも意識しており、攻守両面でリーグ屈指の存在を目指す。

西川愛也と辰己涼介。評価軸は違えど、両選手ともパ・リーグ外野手として最高峰を目指し、オフシーズンも切磋琢磨を続けている。2026年シーズン、彼らがどのような進化を遂げ、チームの順位争いに影響を与えるのか。ライバル同士の熱い戦いは、すでに始まっている。