対イラン攻撃で支持率V字回復のネタニヤフ首相、強硬姿勢の裏に潜む「政治的延命」と司法の壁
ニュース要約: 2026年3月、イスラエルのネタニヤフ首相は対イラン軍事行動の成功により8割超の国民支持を回復しました。トランプ米政権との連携で中東の勢力図を塗り替える野心を見せる一方、国内では自身の汚職裁判の遅延や、政党支持率の伸び悩みという課題も抱えています。軍事的成果を武器に6月の繰り上げ選挙を見据える首相の、権力維持を懸けた危うい舵取りが続いています。
【エルサレム=特派員】
強硬姿勢で支持回復のネタニヤフ首相、イラン攻撃を「平和への入り口」と強調――国内政治の「延命」と司法の壁
2026年3月、中東情勢は歴史的な転換点に立たされている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、宿敵イランに対する大規模な軍事行動を主導し、かつてないほどの国民的支持を再びその手に引き寄せた。かつて汚職疑惑とハマスの大規模テロによる失態で退陣間近とまで目された「不屈の政治家」は、今やトランプ米政権との緊密な連携を武器に、イランの現体制転換という野心的な目標を掲げ、再選への道を突き進んでいる。
■空前の支持率回復:8割がイラン攻撃を容認
最新の世論調査の結果は、ネタニヤフ首相にとって劇的な勝利を物語っている。イスラエル民主主義研究所が今月3日に発表した調査によれば、国民の82.1%が対イラン攻撃を支持。一部の調査では90%を超える驚異的な数字を記録した。2023年10月のハマスによるテロ以降、治安維持の失敗を問われどん底に落ちた支持率は、イランの核関連施設への攻撃成功やヒズボラの弱体化という「軍事的成果」によって、完全にV字回復を遂げた形だ。
右派層の74%が首相の作戦運営能力を「信頼している」と回答しており、国民はネタニヤフ氏を「国家存亡の危機を救う唯一のリーダー」として再定義しつつある。
■トランプ政権との「共通戦術」と「戦略的乖離」
ネタニヤフ首相の復活を支えたのは、米国のトランプ大統領との蜜月関係だ。昨年12月にフロリダ州マール・ア・ラーゴで行われた3時間に及ぶ会談で、ネタニヤフ氏はイランへの直接攻撃の承認を勝ち取った。米国はB2爆撃機を投入し、地中貫通爆弾でイランの核拠点を空爆。ネタニヤフ氏は今月、米フォックス・ニュースの取材に対し、この戦争を「終わりのない戦争ではなく、迅速かつ果断な行動。平和への入り口だ」と自信をのぞかせた。
しかし、両国の間には不穏な「温度差」も浮き彫りになっている。トランプ政権が軍事的圧力を「交渉のカード」として使い、新たな停戦合意を引き出そうとしているのに対し、ネタニヤフ政権は交渉そのものを不要とし、イラン体制そのものの崩壊を目標に据えている。また、首相は今後10年で米国の軍事援助への依存を「先細り」させる意向を表明。これは、米国からの自立を模索しつつ、自国の安全保障政策をより強硬なものへとシフトさせる狙いがある。
■司法の影:延期され続ける汚職裁判
軍事的な高揚感の裏で、ネタニヤフ氏を追い詰めているのが、依然として続く司法の鎖だ。ネタニヤフ首相は2019年に収賄や背任、詐欺の罪で起訴されており、現在も3件の刑事公判が同時並行で進んでいる。通信大手への便宜供与や高額なシャンパンの受け取りといった疑惑に対し、首相は一貫して無罪を主張。「戦争管理」を理由に証言の延期を繰り返し求めており、批判層からは「戦闘の長期化は、結審を先送りにするための政治的な計算だ」との冷ややかな声も上がっている。
さらに、国際刑事裁判所(ICC)が昨年11月にガザでの戦争犯罪容疑で発行した逮捕状も、国際社会における首相の立場を複雑にしている。国内では司法制度改革を通じ、最高裁判所の権限を抑制しようとする動きを見せており、権力維持のためのなりふり構わぬ姿勢が国内の分断を再燃させる火種となっている。
■6月解散の観測:政党支持との矛盾
数字上の支持率は高いものの、政治基盤は必ずしも盤石ではない。ネタニヤフ氏率いる右派「リクード」の党支持率は伸び悩んでおり、最新の議席予測では野党陣営が連立政権を上回る逆転現象が起きている。「イラン攻撃は支持するが、ネタニヤフ政権は別」という、国民の複雑な心理が反映された結果だ。
2026年10月に予定されている総選挙を前に、首相は支持率が高止まりしている6月ごろの繰り上げ選挙実施を見据えているとの観測が強まっている。昨年11月には、自身の汚職疑惑に関連する「恩赦」の提案を行い国民に揺さぶりをかけた。
ガザの停戦交渉がイラン情勢の激化で危機に瀕するなか、ネタニヤフ首相は中東の勢力図を塗り替え、自らの政治生命を繋ぎ止めることができるのか。イスラエルは今、かつてない軍事的勝利の興奮と、指導者のモラルを問う激しい国内対立の狭間に揺れている。
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