中村隼人、歌舞伎座『女殺油地獄』で大役・与兵衛に挑む！伝統と革新を繋ぐ「二刀流」の激

中村隼人、伝統と革新を繋ぐ「二刀流」の激。年始歌舞伎座で大役『女殺油地獄』に挑む

【東京・芸能】 若手歌舞伎界の旗手として、古典と現代メディアの双方で目覚ましい活躍を続ける中村隼人（32）が、2025年年末から2026年新春にかけて、京都南座、歌舞伎座、博多座といった主要な劇場で重要な公演に立て続けに出演する。特に2026年1月、歌舞伎座『壽 初春大歌舞伎』にて、近松門左衛門の傑作『女殺油地獄』の主役、河内屋与兵衛を演じることは、彼のキャリアにおける新たな転機として注目されている。

伝統的な歌舞伎の家系に生まれながら、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』での斬新な演技や、テレビドラマ『大富豪同心』シリーズでの主演など、ジャンルを超越した活動を展開してきた中村隼人。その「二刀流」の経験が、古典の大役でどのように昇華されるのか、歌舞伎ファンのみならず、多方面からの期待が高まっている。

歌舞伎座、松本幸四郎との「与兵衛」Wキャストに挑む

2026年新春の歌舞伎座公演は、中村隼人にとって最も重責を伴う舞台となる。彼が演じる河内屋与兵衛は、放蕩の末に殺人を犯すという、歌舞伎の中でも特に情念深く複雑な役柄だ。

隼人は取材会で、与兵衛について「一見悪役に見えるが、実は情に厚く、人間味のある人物。その複雑な感情の機微を丁寧に演じたい」と意気込みを語っている。この役は、情感の激昂や激情を表現する上で、役者としての力量が問われる大役であり、近年、彼が追求してきた「激」な表現の集大成となる可能性を秘めている。

さらに、この『女殺油地獄』では、松本幸四郎とのWキャスト（Aプロ：幸四郎、Bプロ：隼人）という豪華な配役が組まれている点も話題だ。隼人は、「幸四郎さんの演じる与兵衛とは違う、自分なりの解釈で挑み、観客の皆様に新たな感動を届けたい」と、先輩俳優との競演を成長の糧とする姿勢を示している。古典の名作に、現代の感性を注入し、観客の心を揺さぶる演技が期待されている。

伝統の継承と地域性への挑戦

歌舞伎座での大役に先立ち、中村隼人は2025年12月には京都南座で『平家女護島 俊寛』の丹波少将成経役を勤める。彼はこの公演を「伝統と革新の融合を意識した舞台」と位置づけ、古典の名作を現代の視点でどう演じきるかへの挑戦を掲げている。

また、2026年2月には博多座での公演も控えており、各地の歌舞伎座で精力的に活動を展開する。博多座公演については、九州の観客に向け「地元の皆様に喜んでいただけるような舞台を目指したい」と語り、伝統芸能としての普遍性を保ちつつ、地域ごとの観客層に合わせた細やかな配慮も怠らない。

歌舞伎の可能性を広げる「二刀流」の魅力

中村隼人が、現代の歌舞伎界において特異な存在感を放つ背景には、彼が確立した「二刀流」の活動スタイルがある。

二代目中村錦之助の長男として、2002年の初舞台以来、古典歌舞伎の重厚な大役を着実にこなしてきた一方で、2015年のスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』でのサンジ役を転機に、メディア出演が飛躍的に増加した。テレビドラマやCM（「五大陸」「揖保乃糸」など）での活躍は、歌舞伎の伝統的な枠を超え、若年層や幅広い層に中村隼人という俳優の存在を知らしめた。

この多様なメディア展開は、単なるタレント活動ではなく、歌舞伎への興味喚起を促す戦略として機能している。彼は「歌舞伎以外の仕事を通じて新しい自分を知ってもらい、歌舞伎への興味喚起につなげたい」と語るように、舞台と映像双方での経験を相互に生かし、表現者としての幅を広げている。

伝統を守りつつ、自分なりの解釈を加え、時代の変化に柔軟に対応する中村隼人の姿勢は、歌舞伎の未来を担う存在として高く評価されている。

年末年始の公演は、彼がこれまでのキャリアで培ってきた古典の深みと、現代的な表現力が交錯する特別な舞台となる。中村隼人は観客に向け、「一年の締めくくりと新しい年の幕開けを祝う特別な舞台。伝統の美しさと現代の感性を楽しんでいただければ」とメッセージを寄せている。伝統と革新、その両極を極めようとする若き役者の挑戦から、目が離せない。