ミャンマー内戦激化:軍政崩壊の危機、避難民450万人超の人道危機と日本の役割
ニュース要約: ミャンマーでは国軍と抵抗勢力の戦闘が全土で激化し、軍事政権の統治基盤が急速に脆弱化している。抵抗勢力は支配地域を拡大し、国内避難民は450万人を超える見通し。経済崩壊と人道危機が制御不能となる中、軍政が画策する総選挙の公正性にも懸念が広がり、国際社会、特に日本には主体的な外交的関与が求められている。
ミャンマー内戦、全土で激化:軍政統治基盤が揺らぎ、人道危機は「制御不能」に—問われる日本の外交主体性
【ヤンゴン、東京発】 2025年11月27日現在、ミャンマーでは国軍(軍事政権)と民主派抵抗勢力、少数民族武装組織との間で戦闘が全国的に激化しており、軍事政権の統治基盤が急速に脆弱化している。抵抗勢力による支配地域の拡大、通貨の暴落、そして制御不能な人道危機の三重苦が、同国を未曽有の混乱に陥れている。軍政は2025年末から2026年初頭にかけて総選挙を実施する意向を示すものの、戦闘激化に伴う非常事態宣言の再延長は、その実現可能性と公正性に対する国際社会の懸念を強めている。
抵抗勢力が優位に、揺らぐ軍政支配
ミャンマー国内の軍事衝突は、特に2025年後半に入り、国境地帯から都市部へと拡大し、爆発や銃撃事件が頻発する状況にある。国軍は人口密集地への空爆や砲撃を強化し、「焦土作戦」と呼べるような非人道的な弾圧を続けている。
一方で、民主派武装組織(PDF)と少数民族武装組織の連携が強化され、国軍の支配地域は組織的に侵食されている。シャン州、カヤー州、カレン州などの国境地帯を中心に抵抗勢力の勢力圏が拡大。軍事政権(国家統治評議会SAC)は全国330地区のうち60地区に戒厳令を発令し、弾圧を強化しているものの、実質的な統治能力は低下の一途を辿っている。
軍政は、抵抗勢力の勢力拡大を理由に、2025年1月には非常事態宣言を7回目となる6カ月間延長した。これにより、総選挙の実施は2025年上半期に見送られた形だ。軍政は2025年末から2026年初頭の選挙実施を改めて示唆しているが、戦闘が全土に及ぶ現状では、「自由で公正な選挙」の実施は極めて困難であり、国際社会からは「見せかけの選挙」として承認を得ようとする動きではないかと、強い批判が上がっている。
制御不能の人道危機:避難民450万人超の予測
内戦の激化は、人道状況を極度に悪化させている。国連人道問題調整事務所(OCHA)の予測によると、ミャンマー国内の避難民(IDP)は2025年に450万人を超える見通しだ。これは、全人口の3割以上にあたる約1,990万人が緊急人道支援を必要としていることを意味する。
特に深刻なのが国境地帯である。タイ北西部のメソト周辺には、クーデター後に避難してきた多数のミャンマー人が流入し、医療や教育環境が不十分な状況で不安定な生活を強いられている。また、バングラデシュには約100万6,000人のロヒンギャ人難民が依然として過密なキャンプでの生活を強いられており、支援の縮小や労働規制により生活は困難を増している。
さらに、国際支援の枠組みも揺らいでいる。アメリカ政府が2025年1月以降、トランプ政権の方針転換により支援を大幅に縮小した影響は大きく、現地の医療・教育支援団体は「以前の医療支援の1割程度しか継続できていない」と窮状を訴えている。援助遮断と経済崩壊が複合的に作用し、数百万人が飢餓の瀬戸際にある。
経済基盤の崩壊とハイパーインフレの脅威
軍事衝突の長期化は、ミャンマー経済の基盤を崩壊させた。最も顕著なのが通貨チャットの暴落だ。2024年8月には、1ドル=7,000チャット近くという過去最安値を記録した。内戦による流通の阻害も相まって、インフレは加速し、2024年3月には年率25.4%に達した。
ガソリン価格はクーデター前の5倍、物価全体も2倍を超えるなど、国民生活への打撃は甚大だ。外国からの直接投資は激減し、欧米諸国による経済制裁の拡大や、日本の新規援助停止も相まって、経済回復の見通しは完全に立たない状況だ。インフラや社会基盤も機能不全に陥り、教育や医療などの基本的なサービス提供が困難になっている。
問われる日本外交の主体性
こうした危機的状況に対し、日本政府は人道支援や地震被害に対する緊急援助を継続しつつ、軍政に対し「暴力や不当な拘束の即時停止」「民主体制の回復」を求めている。しかし、2025年末の総選挙に向けた軍政の動きに対し、国際社会と連携しつつも、日本独自の主体的な外交姿勢が求められている。
アジア太平洋資料センター(PARC)などの市民団体は、「軍政の見せかけの選挙を止めるための国際協調をリードし、真の連邦制民主主義を確立するミャンマーの人びとの支援を強化する」よう日本政府に要請。また、連合(日本労働組合総連合会)も軍国への関与停止と民主派支援を求めている。
日本が軍政を利する可能性のある既存の円借款などの経済支援を再検討し、民主派勢力や国民統一政府(NUG)との対話を強化することで、アジアにおける信頼を回復し、ミャンマーの民主化プロセスにおける「保証人」としての役割を果たすべきだという指摘は少なくない。
ミャンマー情勢は、軍事政権の支配力が低下し、抵抗勢力が勢いを得る「転換点」にある。国際社会、特に日本は、この危機が地域全体の不安定化と人道危機をさらに深刻化させる前に、より積極的かつ主体的な関与が求められている。(了)