激動の韓国MBC:ドラマの王国が直面する2026年の試練とデジタル転換への野心
ニュース要約: 2026年春、韓国公営放送MBCは大きな転換点を迎えています。ヒット作『検事イ・ハンヨン』の成功の一方で、W杯放送権の喪失や政治的圧力、広告収入減など多くの課題に直面。地上波の枠を超え、YouTubeやグローバルOTTとの連携を強めるデジタル戦略で生き残りを図る、韓国メディア界の現在地を詳報します。
【ソウル時事】 韓国の放送業界がいま、激動の渦中にある。かつて「ドラマの王国」と称された韓国公営放送局の雄、MBC(韓国文化放送)が、2026年春という節目を迎え、地上波放送の矜持とデジタルシフトの狭間で新たな試練に直面している。
ヒット作『検事イ・ハンヨン』の成功とドラマ枠の苦闘
2026年初頭、MBCは再びその底力を見せつけた。1月から2月にかけて放送された金土ドラマ『検事イ・ハンヨン』が、最高視聴率13.5%を記録。ウェブ小説とマンガを原作とし、累計クリック数1.1億回を超える超人気IP(知的財産)を実写化した本作は、単なる「法廷もの」を超えた「名品ジャンル物」として高い評価を得た。
しかし、その後のラインナップには一抹の不安が漂う。後続の『川の流れに映る月』が1月より放送を開始しているものの、かつての勢いを維持できるかは不透明だ。また、水木ドラマ『固定キーワード(原題)』が2月末に幕を閉じ、主演のスヨン(少女時代)が直筆の手紙でファンに感謝を伝えるなど話題を集めたが、3月から4月にかけての春季改編期における決定的な新作スケジュールは未だ確定していない。業界関係者からは「IP依存のヒットはあるが、ドラマ全体の編成力に波がある」との指摘も出ている。
放送権を巡る「普遍的視聴権」の危機
MBCが直面している最大の逆風は、スポーツ中継権の喪失だ。2026年FIFAワールドカップ(北中米大会)の韓国国内放送権を、新興勢力である有料放送局のJTBCが独占した。これに対し、MBCを含む韓国放送協会は猛烈な抗議声明を発表。「ワールドカップのような国民的関心事は、無料の地上波放送を通じて全世帯が享受すべき『普遍的視聴権』に属するものだ」と主張している。
しかし、資金力に勝る民放やOTT(動画配信サービス)への放映権流出は止まらず、2026年の冬季五輪や2030年のワールドカップも同様の危機に瀕している。視聴者からは「韓国代表の試合を観るために追加料金を払わなければならないのか」という不満の声が漏れており、公共放送としてのMBCの存在意義が改めて問われている。
政治的圧力と報道の自由への懸念
報道機関としてのMBCを取り巻く環境も厳しい。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権との対立は2022年の「大統領専用機搭乗拒否」以降、冷え切ったままだ。政府・与党側はMBCの報道姿勢を「不公正だ」と批判し、外交部がMBC高層部を提訴するなどの法的措置も継続している。
2026年に入り、大規模なメディアストライキこそ発生していないものの、高層部の人事介入や放送通信委員会の規制に対する警戒感は局内で高まっている。公共放送としての独自性を守り抜けるか、それとも時の政権による「地ならし」に屈するのか。報道局内には、かつての自由な言論空間が失われることへの危機感が充満している。
デジタル転換と「YouTubeファースト」の野心
こうした逆風を跳ね返すべく、MBCが注力しているのがデジタル・トランスフォーメーションだ。子会社のMBC Plusを中心に、伝統的な地上波番組をYouTubeなどのプラットフォームに最適化させ、グローバル展開を加速させている。
一例として、昨年12月から放送された『聖水アトラクション』は、YouTubeを通じて全世界へ同時配信された。「K-ブランド」を世界に発信するこの番組は、リアルタイムコマースと連動し、放送と流通を融合させた新しいビジネスモデルを提示した。さらに、NetflixやDisney+といったグローバルOTTとの共同製作やコンテンツ供給も積極的に行い、もはや「地上波チャンネル」という枠組みに固執しない柔軟な戦略を取り始めている。
昨年末に行われた『2025 MBC演芸大賞』では、人気MCのチャン・ドヨンが「大賞を獲れば2026年は無給で働く」と宣言し会場を沸かせたが、その笑いの裏には、制作費削減と広告収入減に苦しむ放送業界の切実な裏事情も透けて見える。
韓国の文化を牽引してきたMBC。2026年の春、彼らが選ぶ道は、伝統の守護か、それともデジタルという大海原への完全な転換か。その一挙手一投足に、韓国メディア界の未来が懸かっている。
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