【ミラノ五輪】スノボ女子ハーフパイプの先駆者・劉佳宇が予選で転倒、救急搬送 5度目の挑戦は14位で幕
ニュース要約: ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪のスノーボード女子ハーフパイプ予選で、中国のベテラン劉佳宇が5度目の五輪に挑むも、大技の着地で頭部を打ち負傷退場しました。意識は回復しているものの、予選14位で敗退が確定。33歳のパイオニアが見せた限界への挑戦と、銀メダリストとしての誇りにSNSでは称賛と励ましの声が広がっています。
【リビニョ発=共同】
イタリア・リビニョのスノーパークで開催されているミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪は11日(日本時間12日)、スノーボード女子ハーフパイプの予選が行われた。中国スノーボード界の先駆者であり、今大会が5度目の五輪出場となるベテラン、劉佳宇(リュウ・ジアユ、33)が、予選2回目に高難度の大技を試みた際、頭部を激しく打ち付け転倒。スロープ上で一時意識を失い、担架で救急搬送されるショッキングな事故が発生した。
劉は現在、現地の病院で治療を受けており、意識は回復しているという。
悲劇のバックフリップ720度
運命の予選2回目だった。1回目に62.75点をマークし、14位につけていた劉は、決勝進出ラインとなる12位以内を目指し、起死回生のアタックに出た。選んだのは、これまでの経験と技術を注ぎ込んだ「バックフリップ720(後空翻720度)」。空中で2回転する高難度の技だ。
しかし、リップ(踏み切り)から飛び出した瞬間、空中での軸がわずかに崩れた。リカバリーを試みたものの制御不能となり、勢いそのままに頭部から雪面に激突。そのまま動かなくなり、会場は静まり返った。直ちに救護班がボランティアと共に駆けつけ、現場で約10分間に及ぶ応急処置が行われた後、劉はアキジャ(救急用ソリ)で搬送、待機していた救急車で病院へ急行した。
この結果、劉の最高得点は1回目の62.75点にとどまり、全体の14位で予選敗退が確定。自身5度目の五輪は、志半ばで幕を閉じる形となった。
挫折と復活、「5度目の挑戦」への執念
劉佳宇という名前は、中国のスノーボード史そのものと言っても過言ではない。2006年のトリノ大会に、当時わずか13歳で初出場。2018年の平昌五輪では、同種目で中国スノーボード史上初となる銀メダルを獲得し、アジア人選手の可能性を世界に知らしめた。
2022年の北京五輪後には一度引退を表明し、ハルビン工業大学で博士号取得を目指すなど学究の道に進んでいた。しかし、「スノーボードへの熱意が消えることはなかった」と、カナダ出身のデリック・リビングストン・コーチとの出会いを機に現役復帰を決意。30歳を超えてなお、若手選手が台頭する過酷なスポーツの世界に戻ってきた。
今大会、中国代表チームは「悲願の金メダル」を狙うべく、劉佳宇、蔡雪桐、武紹桐の強力な布陣で挑んでいた。ライバルの蔡雪桐が83.00点の予選5位、武紹桐が12位で決勝進出を決める中、最年長のリーダーとしてチームを支えた劉の負傷退場は、チームに大きな衝撃を与えている。
限界を攻めるアスリートの矜持
現場で見守った観客からは、担架で運ばれる劉に対し、その闘志を称える温かな拍手が送られた。33歳というプロスノーボーダーとして「大ベテラン」の域にありながら、安全な滑走で予選通過を狙うのではなく、あえてリスクの高い大技に挑んだ姿勢は、多くの関係者の胸を打っている。
中国のSNS上では、「銀メダリストとしての誇りを見せた」「彼女の挑戦こそがスノーボードの精神だ」といった励ましの声が相次いでいる。平昌五輪での快挙以来、劉は常に「自分を超えること」を目標に掲げてきた。今回の事故は、その飽くなき探究心が生んだ悲劇とも言えるが、と同時に、彼女が第一線で戦い続けてきた証左でもある。
病院からの最新情報によれば、劉は精密検査を受けているものの、命に別状はなく意思疎通も可能だという。今後の現役続行や引退の可能性については現時点で語られていない。
雪上のパイオニアが示した、不屈の挑戦心。ミラノの雪原に刻まれた劉佳宇の足跡は、スコアボードの数字以上に重く、深い意味を持っている。
(2026年2月12日 配信)
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