【潮流】「ギリギリ」の淵から響く肯定の歌声 こっちのけんとが示す「令和の表現者」の在り方
ニュース要約: 「はいよろこんで」が100億回再生を突破したマルチクリエイター、こっちのけんと。実兄・菅田将暉への葛藤や双極性障害を公表し、戦略的休養を経て復帰した彼の軌跡を辿ります。自身の弱さをポップに昇華させ、SNS時代の若者の心を掴む「等身大のメッセージ」と、2026年のさらなる飛躍に迫る特集記事です。
【潮流】「ギリギリ」の淵から響く肯定の歌声 こっちのけんとが示す「令和の表現者」の在り方
2026年3月19日 10:00
SNSを中心に爆発的なヒットを連発し、現代の音楽シーンにおいて独自の立ち位置を確立したマルチクリエイター、こっちのけんと(28)。代表曲「はいよろこんで」のミュージックビデオ(MV)再生回数が1億2千万回を突破し、快進撃を続ける彼がいま、再び大きな注目を集めている。3月25日に国立代代木競技場第一体育館で開催される「初耳学フェス 2026」への出演を控え、その「等身大のメッセージ」が、先行きの見えない時代を生きる若者たちの心を捉えて離さない。
■「菅田将暉の弟」という葛藤を越えて
こっちのけんと(本名・菅生健人)を語る上で避けて通れないのが、実兄である俳優・菅田将暉の存在だ。兄が「仮面ライダーW」で鮮烈なデビューを飾った当時、彼はわずか13歳。周囲の過剰な注目により学生生活は一変し、いじめや人間関係の悩みに直面した。
「兄の顔に泥を塗らないよう、理想の弟でいなければならない」。そんな無言のプレッシャーに、10代から20代前半にかけての彼は押し潰されそうになっていたという。兄が紅白歌合戦に初出場を果たした際にも、自身の活動とのギャップに「自分は芸能に向いていない」と深い挫折を味わった。
転機となったのは、大学卒業後に就職した会社を、精神的な不調から退職した際のことだ。兄から掛けられた「人の歌を歌うのは上手いが、自分のオリジナルを作れ」という言葉が、彼を音楽の世界へと引き戻した。自身の脆さや泥臭さを隠さず、一人の人間としての「n=1の個性」をさらけ出す。その決意が、類まれな才能を開花させることとなった。
■「双極性障害」との共存、活動セーブの勇気
彼の楽曲に宿る特有の説得力は、自身のメンタルヘルスとの闘いから生まれている。2023年9月には、**双極性障害(躁うつ病)**であることを公表。2024年末、「はいよろこんで」で日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞し、紅白歌合戦のトップバッターを務めるという絶頂期にありながら、彼は大きな決断を下した。
2025年1月1日、「当分休みます」と活動セーブを宣言。躁期の高揚の後に必ず訪れる「うつ期」の反動を予見し、サラリーマン時代の失敗を繰り返さないための「戦略的休養」だった。この「休む勇気」は、常に効率や成果を求められる現代社会において、多くのリスナーに勇気を与えた。
復帰後の最新曲「ごくろうさん」は、まさにその休養期間を経て生まれたミドルバラードだ。三三七拍子の軽やかな口笛が響く中、力まずに生きることの大切さを説くこの曲には、「明日も頑張ろうと思えた」といった共感の声が殺到している。
■1人アカペラから100億回再生へ
アーティストとしての武器は、大学時代のアカペラ活動で培われた圧倒的な音楽センスだ。口だけで多重奏を再現する「1人アカペラシンガー」としてキャリアをスタート。2ndシングル「死ぬな!」は、精神的な限界を抱える人々への切実なメッセージがTikTokでバイラルヒットし、MV再生数は2000万回を超えた。
さらに2024年の「はいよろこんで」は、軽快なダンスビートと「ギリギリダンス」という中毒性のあるフレーズの裏側に、SOSのサインを隠し持たせた二面性が話題を呼び、総再生数は驚異の100億回を記録した。振り付けから映像制作まで自ら手掛けるマルチな才能は、もはや「誰かの弟」という修飾語を必要としない。
■2026年、さらなる高みへ
現在の活動は多岐にわたる。ラジオパーソナリティとしての顔も持ち、等身大の言葉でリスナーと向き合う姿勢が支持されている。また、3月25日の「初耳学フェス」、5月20日の「でしょフェス!!2026」など、大規模なステージへの出演も続々と決定している。
「将来は兄弟3人(兄・将暉、弟で俳優の菅生新樹)で何かやりたい」という夢を語りつつ、こっちのけんとは今、自身の脚で確かに音楽シーンの最前線を歩んでいる。自身の弱さを「武器」に変え、絶望を「ポップ」に昇華させる彼の音楽は、これからも多くの「ギリギリ」で生きる人々の救いとなるだろう。
(経済部・エンタテインメント担当)
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