【深層レポート】円安で膨らむ「外為特会」の光と影――高市政権の財源活用と熊谷千葉県知事の警鐘
ニュース要約: 2026年2月、1ドル155円超の円安が進む中、数十兆円規模に達した「外為特会」の含み益を巡る議論が激化。高市首相がこれを持論の防衛財源等に活用する姿勢を示す一方、千葉県の熊谷俊人知事は「為替差益に依存する危うさ」を厳しく批判。目先の財源捻出よりも、構造的な経済体質の強化と通貨の信認維持を優先すべきだと訴える、日本経済の分岐点を追います。
【深層レポート】「円安」の裏で膨らむ外為特会の光と影――高市政権の「防衛財源」活用と、熊谷千葉県知事が鳴らす警鐘
【東京】2026年2月。外国為替市場ではドル・円相場が1ドル=155円台を突破し、改めて「円安」の進行が日本経済の最重要課題として浮上している。トランプ米政権によるタカ派のケビン・ウォーシュ氏の次期FRB(米連邦準備制度理事会)議長指名を受け、市場では日米金利差が縮小しにくいとの見方が強まった。この「ドル買い・円売り」の潮流のなか、いま政府内で熱を帯びているのが「外為特会(外国為替資金特別会計)」の活用を巡る議論だ。
■「外為特会」とは何か――円安で膨らむ“含み益”の正体
そもそも外為特会とは、政府が為替相場の急激な変動を抑えるための為替介入(ドル・円の売買)を行うために設けている特別会計だ。その仕組みは、円高局面では「円を売ってドルを買う」介入を行い、手に入れたドルを米国債などで運用する。一方で、現在の局面のように急激な円安が進めば、保有するドル資産を売却して市場の円を買い支える「円買い介入」の原資となる。
現在、この外為特会が注目されているのは、歴史的な円安水準によって、保有する多額のドル建て資産に膨大な「含み益」が生じているからだ。2026年2月時点のドル 円相場において、その含み益は数十兆円規模に達しているとみられ、高市早苗首相は「外為特会の運用が円安でホクホクの状態」と言及。これを防衛費の増額や経済対策の財源として活用する姿勢を鮮明にしている。
実際、政府は令和4年度から防衛力強化資金として外為特会の剰余金を活用しており、令和4年度には1.9兆円を一般会計へ繰り入れた。しかし、この「含み益」を実際に使うには、保有するドル資産を売却して円に替える必要がある。これは実質的な「ドル売り・円買い介入」を意味し、他国との協調や為替市場への影響を考慮すれば、財源捻出という政治的都合だけで安易に実行できるものではない。
■熊谷俊人・千葉県知事の「冷徹な視線」
この政府の動きに対し、地方自治体の首長から厳しい批判の声が上がっている。千葉県の熊谷俊人知事は2月1日、自身のSNSで、高市首相が外為特会の状況を「ホクホク」と表現したことに対し、「為替が円高がいいのか円安がいいのか、総理が口にするようなことではない」と一喝した。
熊谷俊人氏は、一過性の為替差益に依存する政治姿勢を危ういと見ている。同氏は「為替が変動しても強い日本の経済構造をつくりたい。だから国内投資をもっと増やしたい」と訴え、目先の財源捻出よりも、構造的な経済体質の強化を優先すべきだと主張した。
また、熊谷氏は1月の記者会見においても、国政で飛び交う安易な消費税減税議論や財源の裏付けのない公約を「財政規律の崩壊」と厳しく糾弾している。千葉県知事として地域経済を預かる立場から、円安による輸入物価の高騰が県民の生活を直撃している現実を直視し、「金利上昇や円安が加速し、結果的にさらなるインフレを招く」と、ポピュリズムに流れる中央政治に釘を刺した形だ。
■2026年のドル円見通し――160円台への警戒感
2026年の円 ドル相場は、150円から155円を中心としたレンジで推移するとの見方が強まっている。野村證券などは日米金利差の縮小により年末には140円台までの円高を予想するが、市場には依然として1ドル=160円の大台を試すリスクが燻る。
特に日本のインフレ定着や企業の価格転嫁、日銀のハト派的な政策スタンスは、根強い「円売り」の要因となっている。政府・日銀による過去最大規模の介入も一時的な効果に留まっており、外為特会という「打ち出の小槌」を財源として当てにする議論は、裏を返せば日本の構造的な財政悪化を浮き彫りにしているとも言える。
■結び:問われる「通貨の信認」
外為特会とは、本来、通貨の安定を守るための「最後の砦」である。それを政治が「ホクホクの財源」と呼び、安易に一般会計へ流用しようとする姿勢は、国際市場における「円」の信認そのものを揺るがしかねない。
熊谷俊人知事が指摘するように、今求められているのは為替の変動に左右されない強靭な経済構造の構築であり、一時的な含み益をバラマキや防衛費に充てることではない。円安という逆風のなかで、日本がどのようにして通貨の誇りを取り戻すのか。1ドル=155円の壁を前に、その覚悟が問われている。(編集部)
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