INPEXが上場来最高値を更新、原油高と脱炭素「二兎」を追う成長戦略の全貌
ニュース要約: 地政学リスクによる原油高と脱炭素への戦略投資を追い風に、INPEXの株価が上場来最高値圏へ急騰。主力LNG事業の安定収益に加え、水素・アンモニア事業やCCS技術への注力、積極的な株主還元が市場から高く評価されています。エネルギー安全保障の要として、既存事業の収益を次世代投資へ循環させる同社の真価が問われています。
原油高と脱炭素の「二兎」を追うINPEX、上場来最高値圏への躍進とその背景
【東京】2026年3月下旬、東京株式市場でエネルギー大手「INPEX(旧国際石油開発帝石)」の存在感が急速に高まっている。地政学リスクを背景とした原油価格の高騰と、次世代エネルギーへの戦略的な投資が市場から好感され、同社の株価は3月27日に一時4,900円を記録。この1ヶ月間で約35%という驚異的な上昇を見せ、上場来最高値を更新する活況を呈している。
中東情勢緊迫化が押し上げる「有事の石油株」
今回の急騰の直接的な引き金となったのは、3月初頭から激化しているイラン関連の軍事衝突だ。ホルムズ海峡の封鎖懸念が現実味を帯びるなか、WTI原油先物価格は一時1バレル=112ドルと約2年5カ月ぶりの高値を付けた。
エネルギー供給網への不安が世界的に広がる中、日本最大の石油・天然ガス開発会社であるINPEXには、原油高による収益拡大を期待した資金が集中している。市場関係者は「ホルムズ海峡を通過する原油は世界の輸送量の4分の1近くに及び、封鎖リスクが意識される局面では、供給源を多角化しているINPEXが安全資産の一つとして選好されている」と分析する。
業績と投資指標:保守的予想を覆す勢い
INPEXが2月に発表した2025年12月期決算は、売上収益2兆113億円、当期利益3,938億円と、主力のイクシスLNGプロジェクトの安定操業により堅調な結果となった。2026年度については、油価下落リスクを慎重に見込み3,300億円への減益を公式に予想しているが、足元の市況は同社の想定を大きく上回って推移している。
現在の主要投資指標を見ると、PER(予想)は17.30倍、PBR(実績)は1.20倍となっている。特筆すべきは株主還元への姿勢だ。配当利回りは2.30%を維持し、1株当たり108円(2026年12月期予想)の配当に加え、積極的な自社株買いの実施が株価の底堅さを支えている。
主力「イクシスLNG」の稼働状況と将来
同社の屋台骨であるオーストラリアの「イクシスLNGプロジェクト」は、2026年度も順調な推移を見込んでいる。同年度は大規模な計画メンテナンスこそ予定されていないものの、低圧ブースター・コンプレッサーの試運転に伴う一部装置の停止が計画されている。それでも月間約10カーゴという安定した出荷ペースを維持する見通しで、キャッシュフローの源泉としての役割を遺憾なく発揮している。
さらに、2030年頃を見据えたLNGプラントの拡張検討や、生産過程で発生するCO2を回収・貯留するCCS(カーボン・キャプチャ・アンド・ストレージ)技術の導入も進んでおり、化石燃料の「クリーン化」に向けた取り組みが本格化している。
「INPEX Vision 2035」:脱炭素への本気度
投資家が注目しているのは、現在の石油・ガス利権による収益だけではない。INPEXが掲げる「Vision 2035」に基づいた、水素・アンモニア事業へのシフトだ。
新潟県柏崎市で進められているブルー水素・アンモニア製造実証プラントは、2025年の運転開始を経て、現在は商用化に向けた基本設計段階に入っている。また、米国テキサス州でのグリーン水素調査や、アブダビでのクリーンアンモニア共同調査など、その活動領域は日本国内に留まらない。「2030年までにCCS/CCUSで年間250万トン以上の圧入」という野心的な目標は、脱炭素社会における同社の存続意義を示す重要な指標となっている。
展望:エネルギー安全保障の旗手として
地政学リスクに伴うエネルギー危機と、地球規模の課題である脱炭素。相反する二つの課題に直面するなか、INPEXは「既存事業で稼ぎ、次世代投資へ振り向ける」というサイクルを鮮明にしている。
3月29日現在の市場では、原油140ドルシナリオも取り沙汰されるなど、さらなる株価上昇の余地を示唆する専門家も少なくない。しかし、為替変動や世界景気の減速といった不透明感も根強く残る。日本のエネルギー安全保障の要として、同社がどのような舵取りを見せるのか。上場来最高値圏にある今こそ、その真価が問われる局面と言える。
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