ホンダ、半導体不足で生産調整続く:ネクスペリア供給停止で四輪事業赤字転落の危機
ニュース要約: ホンダはネクスペリア社からの半導体供給停止により、国内外での減産や生産停止を余儀なくされています。この影響で2026年3月期の業績予想を大幅に下方修正し、1500億円規模の減益と四輪事業の赤字転落を見込んでいます。特定サプライヤーへの依存や北米在庫の不足が課題となり、次世代EV開発への影響も懸念される中、調達先の多様化が急務となっています。
ホンダ、半導体調達難で生産調整続く オランダ系企業の供給停止が直撃
東京発 本田技研工業(ホンダ)が半導体不足により、国内外の複数工場で生産停止や減産を余儀なくされていることが明らかになった。オランダ系半導体メーカー、ネクスペリア(Nexperia)の出荷停止が主因で、2026年3月期の業績見通しは大幅下方修正を迫られる事態となっている。自動車産業における半導体調達の脆弱性が改めて浮き彫りになった形だ。
年末年始に国内外で生産調整
関係者によると、ホンダは12月末から2026年1月初めにかけて、日本と中国の工場で生産停止や減産を実施する。国内では埼玉県の寄居工場と三重県の鈴鹿製作所が対象とされ、1月5日から6日にかけて2日間の生産停止、その後7日から9日まで減産体制を取る計画だ。中国では合弁会社である広州汽車集団との工場全3拠点で、12月29日から1月2日まで5日間の生産停止を予定している。
北米市場への影響も深刻だ。10月下旬以降、メキシコのセラヤ工場をはじめ、米国やカナダの生産拠点でも段階的な調整が入っており、一部では約7割規模の大幅減産に至ったとの情報もある。人気車種「HR-V」などの供給不足が現地ディーラーから報告されている。
ホンダ広報は工場名の詳細について公表を控えているものの、「特定サプライヤーからの供給停止により、一時的な生産調整を行っている」と認めている。同社は挽回生産などで影響の最小化を図るとしているが、具体的な代替調達先や在庫水準については明らかにしていない。
1500億円の減益要因、四輪事業は赤字転落へ
この半導体不足は、ホンダの業績に深刻な打撃を与えている。同社は11月の決算説明会で、今回の調達障害が今期(2026年3月期)に1500億円規模の減益要因になるとの見通しを示した。通期の売上収益は20兆7000億円(前期比5%減)、営業利益は5500億円(同55%減)と、大幅な下方修正を発表。中核の四輪事業は赤字転落が避けられない見込みだ。
2025年4月から9月の上半期でも、営業利益は前年同期比41%減の4381億円にとどまった。半導体不足に加え、電気自動車(EV)関連の一過性費用2237億円、関税負担1643億円、為替変動による影響1162億円などが重なり、収益を大きく圧迫した形だ。
ホンダ経営陣は、ネクスペリアへの調達依存度が高かったことと、北米工場のフル稼働により中間在庫が薄かった点を問題視している。「調達先の多様化が不十分だった」との反省を示し、今後は複数のサプライヤーからの調達体制構築を急ぐ方針だ。
半導体不足、改善から再燃へ
自動車業界の半導体不足は、新型コロナウイルス禍やウクライナ危機を契機に深刻化し、多くのメーカーが生産調整を迫られた。ホンダでも一時期、人気軽自動車「N-BOX」の納期が半年以上に延びるなど、深刻な影響が出ていた。
2024年以降、供給体制が徐々に改善し、2025年12月現在では「N-BOX」や「ヴェゼル」の納期が1~2カ月程度まで短縮されるなど、正常化の兆しが見えていた。しかし、今回のネクスペリア問題により、再び納期遅延のリスクが高まっている。「フリード」や「ステップワゴン」といったハイブリッド車では、依然として3~4カ月程度の納期を要しており、生産の不安定さが続いている。
業界関係者は「半導体供給は改善傾向にあったが、特定メーカーへの依存度が高い企業では、こうした突発的なリスクに脆弱だ」と指摘する。ホンダの場合、ネクスペリアからの調達が集中していたことが裏目に出た形だ。
次世代EV開発にも影を落とす
半導体調達の不安定さは、ホンダが2026年以降に投入を予定する次世代EV「Honda 0(ゼロ)」シリーズの開発にも影響を及ぼしている。同社はルネサスエレクトロニクスと共同で、AI処理能力2000TOPS級の高性能半導体(SoC)を開発中だが、ルネサス側の開発遅延が報じられており、スケジュールへの懸念が広がっている。
ホンダは次世代EVで、従来の外部調達に頼るのではなく、自社仕様にカスタマイズした半導体を採用する方針だ。台湾TSMCの最先端3ナノメートルプロセスを用いたチップレット設計により、高性能と省電力性の両立を目指している。しかし、最先端プロセスへの依存は、ファウンドリ側の生産能力や地政学リスクといった新たな課題も生む。
業界では「ソフトウエア定義車(SDV)の時代に向け、半導体は自動車の頭脳そのものになる。調達戦略の巧拙が競争力を左右する」との見方が強まっている。ホンダも調達先の多様化やサプライチェーン強化を掲げるが、実行面での課題は少なくない。
グローバルな半導体争奪戦の渦中で
自動車用半導体市場は、世界的な需要増加と供給制約が続いており、各メーカーが確保に奔走している。ホンダは台湾TSMCとの協業を模索するなど、外部ファウンドリとの連携強化に動いているが、詳細な契約内容や資本参加の有無は明らかになっていない。
同社の統合報告書では「レジリエントなサプライチェーン戦略」が掲げられ、供給の安定化や影響分析、ハイブリッド車需要への対応が明記されている。しかし、今回のネクスペリア問題が示すように、個別サプライヤーの停止が即座に生産調整につながる現状は、戦略の実効性に疑問符を付けるものだ。
トヨタ自動車など一部メーカーは、半導体メーカーとの長期契約や出資を通じて安定調達を確保する動きを強めている。ホンダもこうした対応を急ぐ必要があるが、短期的には供給不足の影響が継続する見込みだ。
半導体不足による生産調整は、ホンダの競争力低下だけでなく、日本の自動車産業全体への影響も懸念される。サプライチェーンの強靭化と技術革新が、今後の鍵を握ることになりそうだ。
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