【深層レポート】ホンダ、創業来初の通期赤字転落へ。EV戦略「急ブレーキ」で揺らぐ市場の信頼と株価の行方
ニュース要約: 本田技研工業(ホンダ)は2026年3月期、創業以来初となる最大6900億円の連結純損失を計上する見通しを発表しました。北米でのEV開発中止に伴う巨額の減損処理が主因です。トヨタが最高益を更新する中、EVシフトの誤算が露呈した形となり、高配当利回りや低PBRといった指標の一方で、市場では戦略の再構築と全固体電池の実用化による信頼回復が急務とされています。
【深層レポート】ホンダ、上場来初の通期赤字転落へ。EV戦略「急ブレーキ」で揺らぐ市場の信頼と株価の行方
東京(2026年3月13日) —— 日本の自動車産業が歴史的な転換点に立たされている。本田技研工業(ホンダ、東証プライム 7267)が発表した2026年3月期の連結業績予想の上方修正から一転、巨額の赤字転落という衝撃的なニュースが市場を駆け抜けた。
株価の急落と市場の動揺
2026年3月12日の東京株式市場で、ホンダ 株価は前日比18円安の1448.5円で取引を終えた。しかし、この終値以上に投資家を戦慄させたのは、取引終了後の15時30分に発表された業績予想の大幅下方修正だ。
当初3000億円の黒字を見込んでいた連結最終損益(IFRS)は、一転して4200億円から最大6900億円の赤字に転落する見通しとなった。1948年の創業以来、通期での純損益が赤字となるのは初のこと。この発表を受け、ADR(米国預託証券)市場での本田技研工業 株価(円換算)は一時1459円まで売られ、翌日の国内市場でのさらなる一段安を警戒する動きが強まっている。
誤算の北米、EVシフトの「代償」
赤字転落の主因は、これまで同社が急進的に推進してきた電気自動車(EV)戦略の抜本的な見直しにある。ホンダは北米市場で投入を予定していた次世代EVモデル「EV3」などの開発・発売中止を決定。これに伴う資産の減損やサプライヤーへの補償、研究開発費の処理として、8200億円から1兆1200億円に上る巨額の営業費用を計上する。
「不退転の決意で臨んだEVシフトだったが、市場の変調を見誤った」と、ある証券アナリストは指摘する。中東情勢の緊迫化によるエネルギー価格の高騰や、北米におけるEV需要の減速が、先行投資を続けてきたホンダの財務を直撃した格好だ。米大手証券は今回の発表を受け、投資判断を「強気」から「中立」へ引き下げ、目標株価も2000円から1600円へと大幅に下方修正した。
割安感と配当利回りの「罠」
現在の本田技研工業 株価を指標面で見ると、一見して「過度な割安感」が漂う。PBR(株価純資産倍率)は0.46倍と、解散価値である1倍を大きく下回る水準だ。また、配当についてはDOE(株主資本配当率)を基準に年間70円(利回り約4.8%)を維持する方針を示しており、インカムゲインを重視する個人投資家には魅力的に映るかもしれない。
しかし、足元の業績悪化は深刻だ。2026年3月期の第3四半期累計では、円安による押し上げ効果があったものの、それ以上に研究開発費の増大と関税影響、そしてEV戦略の軌道修正コストが利益を押しつぶしている。トヨタ自動車などがハイブリッド車(HV)の好調で最高益を更新する中、EV一本足打法に近い戦略を採ったホンダの苦境が際立っている。
再生への鍵:ソニー提携と全固体電池
市場の関心は、今回の「膿出し」によって中長期的な反転攻勢が可能かどうかに移っている。ソニーグループとの合弁会社「ソニー・ホンダモビリティ」が進めるEV「AFEELA(アフィーラ)」の投入や、自社開発を進める「全固体電池」の商用化が、損なわれた企業価値を回復させる唯一の道とされる。
「今回の赤字は、次なる成長のための『戦略的撤退』と捉えることもできるが、キャッシュアウトの規模が想定を超えている」と市場関係者は警戒を緩めない。日経平均株価が5万4000円台という高値圏で推移する中、独歩安の様相を呈し始めたホンダ 株価。
投資家は、配当利回りの高さに惑わされることなく、今月末に控える本決算の数値、そして来期以降の「EV再構築プラン」の具体性を厳しく見極める必要がある。名門ホンダが直面した創業以来の危機は、日本のものづくりが直面する「電動化の壁」の険しさを象徴している。
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