【深層報道】銀座クリニックに緊急命令、再生医療の最前線で起きた死亡事故と信頼の危機
ニュース要約: 東京・銀座の「医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック」が、再生医療の施術中に起きた死亡事故を受け、厚生労働省から緊急命令を受けました。自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた最先端治療で注目を集める同院ですが、今回の事態により治療計画は一時中断。自由診療における安全性とプロセスの透明性が改めて問われており、当局による原因究明が進められています。
【深層報道】再生医療の最前線と試練――医療法人ネオポリス診療所銀座クリニックが急成長の裏で直面した「緊急事態」
2026年3月14日 東京
銀座の喧騒を離れた一角、ヒューリック銀座1丁目ビルの4階と5階に、国内外から注目を集める医療機関がある。医療法人ネオポリス診療所銀座クリニック(以下、銀座クリニック)だ。同クリニックは、特定の難病や老化に伴う疾患に対し、患者自身の細胞を用いる「再生医療」の旗手として、独自の地位を築いてきた。
しかし、2026年3月現在、この最先端医療の現場は大きな転換点を迎えている。厚生労働省から発出された「緊急命令」という重い事実を前に、再生医療の安全性と倫理が改めて問われている。
銀座から世界へ――自家脂肪由来間葉系幹細胞の可能性
医療法人ネオポリス診療所銀座クリニックが提供する治療の核となるのは、「自家脂肪由来間葉系幹細胞」を用いた治療だ。これは患者自身の脂肪組織から採取した幹細胞を培養し、体内に戻すことで、損傷した組織の修復や免疫調節を図るものである。
同クリニックは、厚生労働省の「第二種再生医療等提供計画」において計12項目もの治療認可を取得している。その適応範囲は驚くほど広い。パーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患から、脳卒中後遺症、脊髄損傷、さらには関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、うつ病や自閉症までを網羅する。
理事長を務める榎並壽男氏は、皮膚科専門医であり日本再生医療学会の認定医でもある。榎並氏の指揮の下、クリニックは月間500人以上の患者を受け入れ、英語・中国語・韓国語に対応する体制を整えることで、メディカルツーリズムの拠点としてもその名を馳せていた。
治療の多様性と「オーダーメイド」のアプローチ
銀座クリニックの特徴は、投与経路の多様性にある。
- 静脈投与:全身の炎症を抑え、アンチエイジングや進行性疾患にアプローチする。
- 脊髄腔内注射:脳門を通りにくい成分を直接神経系に届け、神経再生を狙う。
- 局所・関節内注射:変形性膝関節症や肩腱板損傷に対し、直接的に組織修復を促す。
特に、銀座エリアの他のクリニックが骨髄由来や臍帯由来の細胞を扱う中で、同院は「自家脂肪由来」に特化してきた。自分の細胞を使うため拒絶反応のリスクが低いとされ、多くの患者が「最後の砦」としてここを訪れていた。
突如として下された「緊急命令」の衝撃
順風満帆に見えた再生医療の旗手に、2026年3月13日、激震が走った。厚生労働省は、医療法人ネオポリス診療所銀座クリニックに対し、治療の一時停止等を命じる緊急命令を出したのである。
事の発端は、同年3月10日、慢性的な痛みの治療で幹細胞投与を受けていた60代の外国籍女性患者が、施術中に容体が急変し、死亡した事案にある。厚生労働省の調査によれば、特定細胞加工物を供給していた「JASC京都幹細胞培養センター」を含め、製造・投与プロセスに何らかの問題があった可能性が浮上している。
現在、同クリニックの治療計画(計画番号:PB3240152~PB3250195など)は一時中断されており、当局による徹底的な原因究明が進められている。
再生医療の未来と課題
今回の事態を受け、銀座エリアで再生医療を検討する患者の間には動揺が広がっている。自由診療(保険外診療)である再生医療は、高額な費用(脂肪採取10万円に加え、1投与ごとの培養・保管費用)がかかる一方で、その効果とリスクのバランスについては、更なる透明性が求められてきた。
銀座クリニックは、徹底した衛生管理と専門医による施術を強みとしてきたが、今回の事故はその信頼を大きく揺るがすものとなった。一方で、既存の治療法で改善が見られなかった患者にとって、再生医療が持つ可能性そのものを否定することはできない。
今後の焦点は、なぜ死亡事故が起きたのか、そして再発防止策がどのように講じられるかにある。医療法人ネオポリス診療所銀座クリニックが再び信頼を取り戻し、再生医療の健全な発展に寄与できるのか。中央区銀座1丁目から発信される次の一報に、医療界全体の注目が集まっている。
(文・共同執筆:東京経済編集部)
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