富士通がV字回復!「AI・サービス」への脱皮と国産ソブリンAIで営業益倍増
ニュース要約: 富士通の2026年3月期第3四半期決算は営業利益が前年同期比99.4%増と驚異的な伸びを記録しました。高収益な「Fujitsu Uvance」への事業転換や、次世代チップ「FUJITSU-MONAKA」を含む国内産ソブリンAI戦略が奏功。ハードウェア中心からAIサービス企業への完全脱皮を進め、市場から「AIプラットフォーマー」として高い評価を得ています。
富士通、V字回復から「AI・サービス」への完全脱皮へ 国内産ソブリンAIと構造改革が奏功
【東京】日本を代表するIT大手、富士通が抜本的な変革の果実を手にしつつある。同社が発表した2026年3月期第3四半期決算(2025年4月〜12月)は、売上収益2兆4,511億円(前年同期比1.8%増)、営業利益2,110億円(同99.4%増)と、利益面でほぼ倍増という驚異的な伸びを記録した。長年進めてきた「ハードウェアからサービスへ」のシフトと、国策とも連動する「メイド・イン・ジャパン」のAI基盤戦略が、投資家の期待をかつてないほど高めている。
「Fujitsu Uvance」が牽引する高収益構造への転換
かつての「パソコン・サーバーの富士通」の姿は、もはや過去のものとなりつつある。現在の成長の柱は、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するサービス事業「Fujitsu Uvance」だ。
最新の決算では、クラウド移行やシステムのモダナイゼーション需要が堅調に推移し、サービスソリューション事業の調整後営業利益は2,291億円(前年同期比67.1%増)と大きく伸長した。特に、SAPやServiceNow、Salesforceといったグローバルプラットフォームを活用したコンサルティング領域が計画を上回るペースで拡大。労働集約型のSIerモデルから、高付加価値なデジタルサービスモデルへの転換が、利益率の劇的な改善をもたらしている。
「ソブリンAI」の旗手として 国内製造への回帰
富士通の次なる成長エンジンとして市場が注目しているのが、2026年3月から本格始動する「ソブリンAI(データ主権型AI)」サーバーの国内製造だ。
同社は、米エヌビディア(NVIDIA)の最新GPU「Blackwell」世代を搭載したサーバーを、企画から製造、保守まで一貫して国内で行う体制を整えた。国際情勢の不安定化やサイバーセキュリティのリスクが高まる中、政府や重要インフラ、大企業にとって、データの機密性を担保できる「日本産」のAI基盤は死守すべき戦略物資となっている。
さらに、2026年度中には2ナノメートル技術を採用した自社開発の次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA(モナカ)」を搭載したサーバーの投入も控える。世界最高水準の省電力性能を誇るこのチップは、電力消費が課題となるAIデータセンターの救世主となる可能性を秘めており、2月19日から開催される「India AI Impact Summit 2026」でも時田隆仁社長自らがその優位性を世界に発信する予定だ。
非コア事業の整理と「持たざる経営」の完遂
業績の拡大と並行して、事業ポートフォリオの激しい「選択と集中」も進んでいる。富士通は2024年以降、ハードウェア事業の分社化(エフサステクノロジーズへの集約)や、長年の懸案であった空調大手「富士通ゼネラル」の売却を断行した。
さらに、欧州拠点の再編も最終段階に入っており、中間持株会社「Fujitsu Services Holdings PLC」の清算手続きが2026年度以降に完了する見通しだ。こうした「負の遺産」や低利益率部門の切り離しにより、経営資源をAI、量子コンピューティング、そしてサイバーセキュリティといった成長領域へ一点集中させている。
株式市場の評価と今後の課題
好調な業績を受け、富士通の株価は2026年1月15日に年初来高値4,668円を記録。2025年初来で55%以上の急伸を見せた。2月16日時点の終値は3,808円と、高値圏からの調整局面にあるものの、依然として市場の期待は高い。
PERは31.48倍と、国内ITサービスベンダーとしては高い水準にあり、これは単なるSIerではなく「AIプラットフォーマー」としての成長性を織り込み始めた結果と言える。自己資本比率も30%を超え、財務の安定性も確認されている。
一方で、課題も残る。海外クラウド勢(ハイパースケーラー)との競合が激化する中で、垂直統合型の「Vertical領域(製造やヘルスケア)」でのDX案件をいかに加速させるか、また、急増した信用買残による受給の重さをどうこなしていくかが焦点となる。
ESG経営とネットゼロへの誓約
富士通はまた、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の核に据えている。2050年のネットゼロ達成に向け、ブロックチェーンを活用した「グリーンスチール」の流通実証や、GHG(温室効果ガス)排出量の可視化サービス「Eco Track」の展開などを加速させている。
サステナビリティ説明会を通じた透明性の高い情報開示は、みずほフィナンシャルグループなどの大手金融機関からも支持を得ており、非財務情報の活用が新たなビジネスチャンスを生む好循環も生まれ始めている。
日本発のテクノロジーで世界に対抗できるか。構造改革を終え、攻めに転じた富士通の「第二の創業」とも言える挑戦は、今まさに正念場を迎えている。
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