フジクラ、生成AI特需で「異次元の成長」へ 時価総額5兆円突破、光インフラの覇権を握る独自技術の正体
ニュース要約: フジクラが生成AI普及を追い風に、時価総額5.3兆円を突破する歴史的躍進を遂げている。世界最高密度の光ケーブル「WTC®」などの独自技術がGAFA等のハイパースケーラーに採用され、営業利益は前年比117%増を記録。AIインフラの本命として、次世代工場建設や核融合分野への挑戦も進め、世界市場での覇権を盤石にしている。
【経済・産業リポート】
フジクラ、生成AI特需で「異次元の成長」へ 時価総額5兆円突破、光インフラの覇権を握る独自技術の正体
2026年2月26日 東京 ―― 日本の電線大手、株式会社フジクラ(以下、フジクラ)が、生成AI(人工知能)の世界的な普及を背景に、歴史的な躍進を遂げている。かつての「電線御三家」の一角は今、データセンター(DC)の心臓部を支える最先端のテック企業へと変貌を遂げた。2026年2月25日時点で株価は年初来高値を更新し、時価総額は5.3兆円を突破。株式市場では「AIインフラの本命」として、その一挙手一投足に熱い視線が注がれている。
■ 驚異の決算:営業利益が前年比117%増
フジクラが発表した2025年度第2四半期(2026年3月期)決算は、市場関係者に大きな衝撃を与えた。屋台骨である「情報通信事業」の売上高は3,035億円(前年同期比63.4%増)、営業利益にいたっては738億円と、前年同期から117.5%もの爆発的な伸びを記録した。
この急成長を牽引しているのが、ハイパースケールデータセンター向けの需要だ。生成AIの学習や推論には膨大なデータ通信が必要となり、DC内部およびDC間を結ぶ光ファイバ網の増強が世界規模で加速している。同社は2026年3月期の連結業績予想を上方修正し、営業利益は1,790億円に達する見込みだ。HDD(ハードディスクドライブ)関連のエレクトロニクス事業が一部低迷するなか、情報通信セグメントがグループ全体の収益を圧倒的に押し上げる構造となっている。
■ 世界を席巻する独自技術「SWR®」と「WTC®」
フジクラの快進撃を支えるのは、他社の追随を許さない独自の光ファイバ技術だ。その象徴が、間欠接着型光ファイバテープ**「SWR®(Spider Web Ribbon®)」と、これを用いた細径高密度光ケーブル「WTC®(Wrapping Tube Cable®)」**である。
「SWR®」は、蜘蛛の巣のようにファイバを間欠的に接着することで、従来のテープ芯線よりも柔軟に折り畳める構造を持つ。これにより、既存の配管スペースを変えることなく、従来の数倍の密度でファイバを収容することが可能となった。世界最高密度の13824心を実現した「WTC®」は、DC内の限られたスペースを最大限に活用したいGAFAをはじめとするハイパースケーラーのニーズに合致。施工時間の短縮やTCO(総保有コスト)の削減に直結する技術として、欧米や中東市場で圧倒的なシェアを獲得している。
■ 供給体制の強化と地政学リスクへの備え
需要の爆発に合わせ、フジクラは攻めの投資に転じている。千葉県佐倉事業所に約450億円を投じ、次世代工場を建設。2025年からの稼働開始により、SWR®およびWTC®の生産能力を大幅に増強する。この新工場は屋根置き太陽光パネルを備えたカーボンニュートラル対応型であり、同社が進める「環境長期ビジョン2050」の象徴的拠点となる。
また、供給網の最適化も加速させている。米中貿易摩擦などの地政学リスクを見据え、米国向け供給のための新工場建設を検討するほか、製造拠点を東欧からより安定性の高い北アフリカへ集約。ASEAN地域での生産拡大を通じてコスト競争力を維持しながら、売上の約7割を占める海外市場への安定供給体制を盤石なものにしている。
■ 次なるフロンティア:超電導と核融合への挑戦
フジクラの視線は、現在のAI特需の先にも向けられている。同社が長年培ってきた「高温超電導線材」の技術が、次世代エネルギーの切り札とされる核融合発電の分野で花開こうとしている。英国の核融合プロジェクト(STEP)へのサプライチェーン参入や、グリーンボンドを活用した研究開発は、同社を単なる通信部材メーカーから、持続可能な社会を支える「エネルギー・インフラの革新者」へと押し上げつつある。
■ 市場の評価:ボラティリティを伴う期待感
株価の急騰に伴い、フジクラのボラティリティ(変動率)は高まっており、ベータ値は市場平均の2倍近い水準で推移している。PER(株価収益率)は50倍近くと一見割高に見えるが、EPS(1株当たり利益)の成長率を加味したPEGレシオは1倍を下回る水準にあり、投資家は依然としてその成長性を高く評価している。
「生成AIによる社会変革は、まだ緒に就いたばかりだ」。市場関係者の多くはそう口を揃える。光ファイバの「細径化・高密度化」という物理層の進化で世界のデジタルインフラを支えるフジクラ。日本が世界に誇る技術力を持つこの企業が、AI時代の覇権を握り続ける日は、しばらく続きそうだ。
(文:経済部 産業取材班)
参考情報源
関連コンテンツ
マイニュースへ
あなた専用のニュースレポートをチェックしましょう