習近平政権、第15次5カ年計画が始動:新質生産力と内需主導で描く2026年の安定成長戦略
ニュース要約: 習近平政権は2026年、第15次5カ年計画を本格始動させました。ハイテク産業を核とする「新質生産力」の向上と「共同富裕」に基づく内需拡大を柱に、質の高い経済成長を目指します。強固な一強体制の下、対米外交の安定やAPEC議長国としての影響力強化を図る一方、国家主導の産業支援が招く国際的な摩擦への対応が、今後の中国経済の持続的な成長と安定に向けた大きな課題となります。
習近平政権、2026年「第15次5カ年計画」が始動 内需主導と「新質生産力」で描く安定成長への青写真
【北京=特派員】 2026年4月6日、中国は習近平国家主席の強力なリーダーシップの下、新たな国家発展戦略である「第15次5カ年計画(2026-2030年)」の初年度を本格的に滑り出させた。先の全国人民代表大会(全人代)を経て明確になったのは、不動産不況や外圧といった逆風の中でも、習近平氏による「一強体制」を背景とした、質的向上と自律的な経済成長を追求する姿勢だ。
「新質生産力」を核とした経済転換
習近平政権が現在、最優先課題として掲げているのが「新質生産力(しんしつせいさんりょく)」の向上である。これは科学技術の革新を主導とし、従来の労働集約型から脱却した、高効率・高品質な生産体制への転換を指す。
2026年の政府活動報告では、この「新質生産力」を具体化するため、半導体や電気自動車(EV)といったハイテク産業への国家的な支援が一段と強化された。政府系ファンドや国家開発銀行を通じた巨額の資金供給、税制優遇措置を組み合わせ、欧米の制裁に屈しない「技術の自律自強」を急ぐ。背景には、少子高齢化による労働人口の減少と、投資効率の低下という構造的問題がある。習近平氏は、技術革新こそが中国経済の持続的なエンジンになると見定めている。
内需拡大と「共同富裕」のジレンマ
経済成長目標については、GDP成長率4.5~5.0%程度、赤字率4%という、攻めと守りのバランスを重視した数字が設定された。李強首相が示した方針によれば、今後の成長の柱は「国内大循環」の強化、すなわち内需の拡大だ。
習近平氏が提唱する「共同富裕」の理念に基づき、所得格差の是正と中間層の拡大を目指す施策が続く。一次分配(賃金の向上)、二次分配(税制による再分配)、三次分配(企業の寄付奨励)の三段構えで、市民の購買力を引き上げ、海外市場に依存しすぎない経済構造への脱皮を図る。しかし、不動産市場の低迷が長引く中で、国民の消費マインドをどこまで回復させられるかが、2026年の大きな焦点となる。
権力集中の深化と2027年への布石
政治面に目を向けると、習近平氏への権力集中は極めて強固だ。2022年の第20回党大会を経て確立された側近中心の指導体制は、トップダウンによる迅速な意思決定を可能にした。
党内では鄧小平時代の集団指導体制は過去のものとなり、習氏の政治思想が国家運営のあらゆる局面に浸透している。専門家の間では、2027年に控える第21回党大会でのさらなる続投を見据え、2026年を「実績作りの重要な年」と位置づける見方が強い。所得格差の是正や汚職撲滅といった国民の関心が高いテーマを強調することで、求心力の維持を図る狙いが見て取れる。
対米・対欧外交:「大船」の比喩に込めた戦略
国際情勢が緊迫する中、習主席は「責任ある大国」としてのイメージ戦略を加速させている。
対米関係ではトランプ大統領との電話会談において、両国関係を荒波の中を進む「大船」に例え、不衝突・不対抗の原則を強調。2026年を「協力共栄の年」とするよう呼びかけ、安定した外交環境の構築に腐心している。一方で、欧州諸国に対してはドイツやアイルランドの首脳を相次いで迎え入れるなど、米欧の足並みを乱す「楔(くさび)」を打ち込む実務外交を展開した。
また、2026年は中国がAPEC(アジア太平洋経済協力)の議長国を務める。深圳で開催予定の第33回首脳非公式会議に向け、アジア太平洋地域における自由貿易の旗振り役を演じることで、米国主導の秩序に対抗する地政学的な影響力を誇示する構えだ。
課題:副作用としての国際的摩擦
しかし、習近平政権が進める国家主導の産業支援策(産業補助金)は、欧米諸国との摩擦を激化させる要因にもなっている。ハイテク分野での「自律」が、他国にとっては「不当な競争」と映り、追加関税などの対抗措置を招く悪循環が生じている。
習近平氏は、強硬な政治基盤を背景に、こうした外圧に屈しない姿勢を鮮明にしている。2026年の中国経済と外交は、この「強気のリーダーシップ」がもたらす安定と、国際社会との軋轢の間で、難しい舵取りを迫られることになるだろう。
(北京=宮本 拓郎)
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