A.B.C-Z、4人体制で迎える変革期：新アルバムとツアーが示す「レジリエンス」と未来戦略

A.B.C-Z、変革期に挑む「新生」の舞台：新アルバムとツアーが示すレジリエンスと市場戦略

【東京】 長年にわたり日本のエンターテインメント界を牽引してきたアイドルグループ、A.B.C-Zが、今秋、大きな転機を迎えている。2023年末の河合郁人氏の脱退、そして所属事務所が「STARTO ENTERTAINMENT」へと移行する激動の「後Johnny's時代」において、4人体制となったabczは、新アルバムの発表と「Dynamic Tokyo Tour」の開始をもって、その持続性と変革への意欲を市場に示している。

観客参加型で勝負する新アルバムとツアー

2025年11月23日にキックオフした「Dynamic Tokyo Tour」は、A.B.C-Zにとって、4人体制での初めての大規模な活動となる。ツアーの核となる新アルバム（タイトル未発表）は、従来のポップ路線に加えて、エレクトロニックや実験的な要素を取り入れたとされ、ファンからは「舞台表現の幅が広がった」と高い評価を得ている。

特に注目すべきは、今回の戦略が「現場体験」と「ファンとのインタラクション」を強く意識している点だ。巡演初日の東京公演は即日完売を記録。ソーシャルメディア上では、新曲のライブツアーにおける「インタラクティブ性」が熱狂的に語られている。

販売動向について、現時点でOriconなどの公的な新アルバム首週売上データは未公表だが、業界関係者は「安定したファン層の支持と、ツアー連動の販売戦略により、週間チャート上位（トップ10）へのランクインは確実」と予測する。過去のアルバム『Going With Zephyr』（2019年）が示した約8万枚という実績を鑑みれば、今回のabczの新アルバムは、市場の期待値を上回る堅調な数字を達成する可能性が高い。これは、STARTO ENTERTAINMENT体制下で、ベテラングループが固定ファンベースを維持しつつ、新たな購買層にアプローチできている証左と言えるだろう。

橋本良亮の舞台躍進が示す個の力

グループのレジリエンスを支えているのは、メンバー個々の活動の充実だ。中でも、橋本良亮氏の活躍は目覚ましい。

2025年9月に上演された音楽劇『The Dinner Table Detective』（ディナー後の推理）において、橋本良亮氏は名門出身の警官役を熱演。彼の軽妙なコメディセンス、そしてアイドルとしての枠を超えた高いダンススキルと舞台表現力は、メディアや批評家から絶賛された。Broadway World Japanは「卓越したダンスと自然なコメディリズムで全場を魅了した」と評し、舞台俳優としての地位を確固たるものにしている。

abczは、河合郁人氏というMCやバラエティの顔を失ったものの、橋本良亮氏や他のメンバーがそれぞれの得意分野（舞台、アクロバット、振付）で実績を積み重ねることで、グループ全体のブランド価値を多角的に高めている。個人の成功が、グループの多様性と安定感に還元される好循環を生み出していると言える。

新世代アイドルとの競争軸

しかし、J-POP市場全体を見渡せば、A.B.C-Zを取り巻く環境は厳しさを増している。TWS、BE:FIRST、Genicといった新世代アイドルグループが、K-POP的要素やHIP-HOPを取り入れた多様な音楽性、そしてSNSやストリーミングを駆使したプロモーションで若年層のファンを急速に獲得しているからだ。

A.B.C-Zの強みは、長年の活動で培われた「安定感」と「高いパフォーマンス力」にある。一方で、新世代アイドルが持つ「新鮮さ」や「海外展開の積極性」と比較すると、プロモーション手法の革新や音楽的実験性のさらなる追求が求められる。

2025年現在、abczは「ベテラン」としての地位を確立しつつあるが、市場のトレンドに対応するためには、彼らが今回の新アルバムで試みたような「実験性」をさらに深め、デジタルプラットフォームでの露出戦略を強化することが、今後の持続的な成長の鍵となるだろう。

結論：試練を乗り越えるA.B.C-Zの未来

A.B.C-Zは、メンバーの離脱、そして事務所の大きな再編という二重の試練を乗り越え、2025年秋に力強い活動を再開した。ライブツアーの成功と、橋本良亮氏をはじめとするメンバー個々の活躍は、グループが持つ高い「レジリエンス」を証明している。

彼らの今後の課題は、強固なファンベースを維持しつつ、いかにして新世代アイドルが牽引する新たな市場の潮流を取り込むかにある。STARTO ENTERTAINMENT体制の下、新生A.B.C-Zが、その長年の経験と舞台で培った実力をもって、J-POP界に新たな足跡を刻むことができるか、業界の注目が集まっている。